[Turn 悪鬼]55.
その瞬間、文字通り世界は変わった。
世の中は今や、縦横高さの空間ではない。
何らかの原因か、パラドックスを防ぐためなのか、総司たちには世界は本当は別の空間だったという記憶も、記録もなくなっている。だけどあえて説明するなら、彼らは既に高さという概念がない世界へと転移していた。
「……総司っ!」
みさきは総司のことを叩く。
彼は、奪ったものの代償が大きすぎた。恐らくそれが原因だろう。
このままでは、彼は死ぬ。
だが無慈悲なことに、それでも敵は攻めてくる。
――ことはなかった。
「あなたたち、本当は隙のある今のタイミングでどう攻撃するか考えてるんでしょ?」
みさきが言ったのは大きなひとりごとだ。しかしそれは、今姿に映る二人に向いている。
もう一人いたような気がするが……。みさきには知る由もない話だ。
「ほんっとに性格の悪い集団だよね。敵としては百点満点すぎて、逆に尊敬しちゃう。」
みさきは小さなナイフを振り回す。
「総司を殺すきっかけを作ったんだ。少しでも彼を傷つける奴は、私が絶対に許さない。」
彼女の中にあるのは、目の前の二人に対する憎悪と、総司の勝手な行動による怒りと悲しみだけだ。
「総司……あなたがいなかったら、何の意味もないじゃない。」
そして、みさきは社長が死んで生き返ったことを思い出す。
「あ。」
みさきは最高で最低な手段を閃いた。
「よいしょ。」
総司は死にかけながらも目を開ける。
……何があったかを伝えるのはやめておこう。
「全部、総司のためだから。『完全修復』。」
そして、総司は事なきを得たのだった。
「最初にも言ったけど、ベータが第一優先なのは変わらない。……でも、急がないと大変なことになるよ。」
みさきは総司に一言呟く。
「……わかってる。」
そこに、がちゃんとドアが開いた音がした。
そこにいたのは、神崎以外の全員だった。
「あんな奴ら、すぐに倒して見せましょう。」
アルファもベータも余裕そうだ。
「そうはいくかな。」
社長には静かな怒りの炎がともっている。
それは他の全員も同じだ。
(ほとんど)全員いるから、心強い。
「雑用係の漢字が雑用係だからといって侮ってはいけませんよ。雑用係は一番の働き者なんだから。」




