[Turn 悪鬼]37.
「大丈夫だった……?」
部屋に戻る途中、何が起こったのか聞くのが怖かった総司は明らかにアウトな状態の彼女に身の心配をすることしかできなかった。
「普通に無理。……何か知っているようだったけど、あの人にやられたことあるの?」
「……うん。」
総司は半年前のことを思い出した。
……思い出さない方が正解だったかもしれない。あの患者が滅多刺しにされる光景は思い出しただけでも吐き気がする。
「それは大変だ。視線は痛いし体も痛いし……。この会社みんなあの人に滅多刺しにされたことあるの怖すぎるでしょ。」
「――『滅多刺し』?」
総司の知っている範囲では、そんなことをされたのは真琴ぐらいしかいない。
「え?」
みさきはきょとんとしている。
「あなたは何をされたの?」
「篠崎さんが患者を滅多刺しにするのを目の当たりにしたよ。」
「私、『あんな戦い方は危ない』とか言われて一度殺されたんだけど……。」
あ。と総司は思った。
篠崎さん、やっぱり怒らせてはいけない人だ。と。
部屋の鍵を開ける。
真琴さんから情報を聞いていたのだろうか、何も考えずに部屋に入っていった。
「お邪魔しまーす。」
彼女はそのまま風呂場に行く。
「ちょっと、服!」
「ない!」
「きっとタンスに代わりが入ってるから取ってから行って!」
「はーい。」
みさきはタンスを引き、「本当に服が入ってる……。」と言いながらテキトーに下着と寝間着を引っ張って風呂場に入っていった。
総司自身は、自分の部屋に女子がいることを考えることで精一杯だ。
そんな中でも、恐らくすぐに寝ることになるだろうと思って、総司は押し入れから布団を取り出す。
「……何か重くない?」
総司は布団を広げてみる。いつもの倍あった。
放心状態になる。
「一緒の布団で寝ろと?」
そうだ、と言うかのように毛布もいつもの倍になってた。今までのサイズの布団と毛布はゼロ。
「あの人たち頭おかしいだろ……。」
総司は呆れることしかできなかった。




