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【完結済】天国と地獄  作者: 吉田真一
第5章 琴音の覚醒
99/178

日常

 4月13日(日)7時30分


 琴音が純喫茶スイートピーで働き始めて、早3日が過ぎた日曜日の朝。


 平日ともなれば通勤通学の人達で賑わうこの駅前通りも、休日ともならば人通りはまばら。清々しくて静かな朝を向かえていたのである。


 そんな中、東の窓から朝日差し込む開店前の純喫茶スイートピーはどんなだったのかと言うと、


 ジュー......


 店長はモーニングセット用の目玉焼きを焼き始め、


 サッ、サッ、サッ......


 隆美さんは慣れた手つきで、いくつものナイフとフォークを紙ナプキンで包み込んでいる。


 これら全てが開店前のルーティン。それぞれがそれぞれの仕事を淡々とこなしていくのが日常と化してた。



 ちなみにここまでは隆美さんと店長のお話。ならば、残るもう1人は何処に? そう思って店内を隈なく見渡してはみたものの、どう言う訳か他に人の姿は見当たらない。


 まさか辞めちゃったとか? 


 それとも遅刻?



「隆美、何て言うかその......琴音ちゃんが居ないと、この店もやたらと広く見えるな」


 店長は本日10個目の目玉焼きをひっくり返しながら、何やら寂し気な表情を浮かべてる。


「琴音ちゃんは3日間働き詰めだったのよ。日曜日と水曜日は休みの約束なんだから女々しいこと言わないの。


 今日は日曜日で大したピークも無いから2人でゆったり働きましょうよ。それとも、あたし1人じゃ不満?」


「い、いや何言ってるんだ。そう言う意味じゃ無いって!」


「ふっ、ふっ、冗談よ。正直言っちゃうとね、あたしも少し寂しいのよ。だってここのところずっと一緒に働いてたんだから。


 なんかもうかなり昔から働いてたような気がしちゃって......でもまだたったの3日間なのよね。何か不思議な感じだわ」


「きっとそれだけ存在感が大きいってことなんだろ? お客さん達からも人気絶大だしな」


「確かにそうよね」



 どうやら......日曜日の今日は非番だったらしい。


 話によると、琴音が働き始める前にもパートさんを雇っていたそうな。基本盆と正月以外は休みを取らないこの店において、2人体制で仕事を回し切れるものじゃ無い。


 そんなパートさんが家庭の都合で突然辞めてしまった為、琴音を雇い入れるに至ったと言うのがこれまでの経緯。


 ちなみにこの近辺は会社が多くて、土日祝日よりも平日の方が忙しくて売上も多かった。その差は顕著と言える。


 そんな理由から2人は土日祝日を交互に休み、店長が休みの時は隆美さんが厨房に立ってた。


 でもパートさんが辞めてしまってからと言うものの、2人はなんと無休。正直ヘトヘトだった。きっと琴音が一人前になれば、また交互に休むことが出来るのだろう。



 そんなこんなで......


 すっかり琴音シックに掛かっていた2人ではあったが、いつまでものんびり手を休めてる訳にもいかなかった。



 柱時計の針は、7時45分を指している。


 開店の8時にでもなれば、いつもの如く常連さん達がこぞってやって来てくれる。


「さぁ、もたもたしてられないわ! 急がなくちゃ!」


 隆美さんが白日夢の世界から舞い戻り、再び手を動かし始めたその時のこと。ここでちょっとしたハプニングが巻き起こってしまうのである。


 バチンッ。


 ?!


「あら?」


「ん、なんだ?」


 気付けばなんと、店内の照明はその全てが落ち、更にはそれまで大きな音を立ててたキッチンの換気扇が止まってるではないか。


 どうやら、店内の電力が全て落ちてしまったようだ。



「なんだかな......またブレーカー落ちか」


「あら、また? この前も落ちたばかりじゃない。あの時は電気屋さん何て言ってたの?」


「特に原因は不明、少し様子を見ましょうって話だったと思うぞ」


「ちょっと困るわよ。もうすぐ開店なんだから......また電気屋さん呼べば?」


「ダメだ。日曜は電気屋も休み。まぁちょっと俺が見て来るよ」



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