狩人本能
もう居ても立っても居られなかった。口より先に足が動いていたことを、今でもはっきり覚えてる。無我夢中とは、多分こう言う時に使う言葉なんだろう。
ところが、いざ蓋を開けてみると、
「い、居ない! どこ行っちゃったのよ?!」
「あれれ......さっきまでここに居たのにね」
「風船配り終わってもう帰っちゃったんじゃない?」
残念だけど、そこに熊五郎と鹿音の姿は無かった。
因みに、ここを離れてからまだ5分と経っちゃいない。ならば、間違いなくまだ近くに居る筈。しかもあんな着ぐるみ着てるんだから、目立つに決まってる。
「どこっ? どこなの?!」
あたしが目を血眼にして探索を始めたその時のことだった。
「佳奈子、こんな所に......」
友人の1人が何やら大木の下を指差してる。
「何よ! どうしたの?!」
「ちょっと、これ見て」
あたしが駆け寄ってみると、そこには怪しい大きなビニール袋が2つ。木の影に隠すように並べられてる。
「まさか!」
そんな訳で開けてみれば予想に違わず、ビンゴだった。
熊五郎! 鹿音!
と言うことは......今2人は素顔を曝け出してるってこと?! 間違い無い、きっとそうだ!
こんないい加減な隠し方してる位だから、向こうだって焦ってるんだろう。ならばこう言う時こそ、あたしが落ち着かなきゃ。
なので、ここは1度深呼吸。
フゥ......
少し頭を冷やして、血圧を下げて。
よしっ、ここからが本当の勝負!
「さぁ、本堂に行くわよ。着いて来てね」
理由は言うまでも無い。秋祭りに参加するってことは、そこへ行くこと自体が目的なんだから。
正直言って、今あたしが2人の元へ向かう理由は、『狩猟本能』以外に無かった。
そんな狩人が獲物を見付けたとして、何を言ってやるの? それで、どうするつもりなの? なんて聞かれても、正直よく分かんない。
押し掛けたところで、自分が惨めになるだけってことも分かってる。
ただあたしを差し置いて、2人が一緒に居ること自体が許せないの。だから潰してやる! って、それだけのことよ。
もうどうなっても、知らないんだから!
そんなこんなで......
友人2人を引き連れて、決戦の地、本堂へと向かい始めたその時のことだった。
「佳奈子、見付けたぞ!」
突然呼び止められたから、誰かと思って振り返ると、いかにも人相の悪い2人の男が走り寄って来てる。
「ちょっと怖い......あの人達誰なの?!」
友人の2人が揃ってブルブル怯えてるから、
「大丈夫、あれはあたしの知り合いよ。ちょっと悠真くんと向日葵を探させてたの。だから安心して」
安心させようと思って、そんな風に教えて上げたんだけど、結果は逆効果だったみたい。
「佳奈子、ちょっとあなたおかしいよ......あんな人達とつるんで、何しようとしてるの?」
「あたしヤダ......もう付き合い切れない」
「ごめんね、あたし達帰るから」
スタスタスタ......
スタスタスタ......
あたしの弁論も聞かないで、あっさりと消えて行く友人の2人だった。
少しは寂しい気もしたけど、この際友人なんかどうでもいい。帰りたければ、勝手に帰ればいいのよ! なので、
「どうぞ、ご勝手に」
クールに送り出してやった。
今のあたしに取っては、ここへ来たばかりの2人の方がよっぽど重要だわ。




