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【完結済】天国と地獄  作者: 吉田真一
第3章 向日葵の秋祭り
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狩人本能

 もう居ても立っても居られなかった。口より先に足が動いていたことを、今でもはっきり覚えてる。無我夢中とは、多分こう言う時に使う言葉なんだろう。


 ところが、いざ蓋を開けてみると、


「い、居ない! どこ行っちゃったのよ?!」


「あれれ......さっきまでここに居たのにね」


「風船配り終わってもう帰っちゃったんじゃない?」


 残念だけど、そこに熊五郎と鹿音の姿は無かった。



 因みに、ここを離れてからまだ5分と経っちゃいない。ならば、間違いなくまだ近くに居る筈。しかもあんな着ぐるみ着てるんだから、目立つに決まってる。


「どこっ? どこなの?!」


 あたしが目を血眼にして探索を始めたその時のことだった。


「佳奈子、こんな所に......」


 友人の1人が何やら大木の下を指差してる。


「何よ! どうしたの?!」


「ちょっと、これ見て」


 あたしが駆け寄ってみると、そこには怪しい大きなビニール袋が2つ。木の影に隠すように並べられてる。


「まさか!」


 そんな訳で開けてみれば予想に違わず、ビンゴだった。


 熊五郎! 鹿音!


 と言うことは......今2人は素顔を曝け出してるってこと?! 間違い無い、きっとそうだ!


 こんないい加減な隠し方してる位だから、向こうだって焦ってるんだろう。ならばこう言う時こそ、あたしが落ち着かなきゃ。


 なので、ここは1度深呼吸。


 フゥ......


 少し頭を冷やして、血圧を下げて。


 よしっ、ここからが本当の勝負!



「さぁ、本堂に行くわよ。着いて来てね」


 理由は言うまでも無い。秋祭りに参加するってことは、そこへ行くこと自体が目的なんだから。


 正直言って、今あたしが2人の元へ向かう理由は、『狩猟本能』以外に無かった。


 そんな狩人が獲物を見付けたとして、何を言ってやるの? それで、どうするつもりなの? なんて聞かれても、正直よく分かんない。


 押し掛けたところで、自分が惨めになるだけってことも分かってる。


 ただあたしを差し置いて、2人が一緒に居ること自体が許せないの。だから潰してやる! って、それだけのことよ。


 もうどうなっても、知らないんだから!



 そんなこんなで......


 友人2人を引き連れて、決戦の地、本堂へと向かい始めたその時のことだった。


「佳奈子、見付けたぞ!」


 突然呼び止められたから、誰かと思って振り返ると、いかにも人相の悪い2人の男が走り寄って来てる。


「ちょっと怖い......あの人達誰なの?!」


 友人の2人が揃ってブルブル怯えてるから、


「大丈夫、あれはあたしの知り合いよ。ちょっと悠真くんと向日葵を探させてたの。だから安心して」


 安心させようと思って、そんな風に教えて上げたんだけど、結果は逆効果だったみたい。


「佳奈子、ちょっとあなたおかしいよ......あんな人達とつるんで、何しようとしてるの?」


「あたしヤダ......もう付き合い切れない」


「ごめんね、あたし達帰るから」


 スタスタスタ......

 スタスタスタ......


 あたしの弁論も聞かないで、あっさりと消えて行く友人の2人だった。


 少しは寂しい気もしたけど、この際友人なんかどうでもいい。帰りたければ、勝手に帰ればいいのよ! なので、


「どうぞ、ご勝手に」


 クールに送り出してやった。


 今のあたしに取っては、ここへ来たばかりの2人の方がよっぽど重要だわ。



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