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【完結済】天国と地獄  作者: 吉田真一
第3章 向日葵の秋祭り
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雅楽

 でも行ったら、お父さんに迷惑掛けちゃうし、行ってもし佳奈子に遭遇したら、大騒ぎになっちゃう! 


 あらら......悠真くんたら玄関の前で座りこんじゃったわ。あたしが出て行かなきゃ、朝まででも待ってそう。それじゃ、風邪引いちゃうよ!


 もうダメ......頭がパンクしそう。神様、どうかあたしを助けて下さい!


 そんなパンク寸前のあたしが御影神社の方角に向かって、


 パン、パンッ! 


 苦し紛れにニ礼ニ拍手を行ったその時だった。


 なんと! 本当に神様が現れてくれたの。



「向日葵、早く支度して出てきなさい! 今お父さんトイレで新聞読んでるから、この隙に勝手口から出るのよ」 お母さん曰く。


「でももしあたしがお祭りに行って佳奈子に会っちゃったら......」 あたし曰く。


「向日葵、大丈夫だよ。佳奈子さんには2人が絶対に見えないから」 賢也曰く。



 そんなこんなで......


 あたしは勝手口から愛するその人の元へ、賢也の魔法を使って勇躍飛び出して行ったのでした。



「悠真さん!」


「向日葵!」


 ※ ※ ※ ※ ※ ※


 そして......


 秋祭り真っ盛りの20時。


 今ちょうど、メインイベントとも言える神主さんと巫女さん達の練り歩きが始まったところだった。



 村人の安全と豊作を願うそんな練り歩きは、江戸時代から続く由緒有る儀式なの。


 総勢30人にも及ぶ厳かな行列は、皆片手に松明を持って、参道の入口から本堂までの約50mをゆっくりと練り歩いて行く。


 そんな練り歩きが行われてる間は、本堂の中でずっと『雅楽ががく』が演奏されてて、神秘的な雰囲気を醸し出してくれてる。


 神社結婚式に出席したことの有る人だったら、きっと『雅楽』は耳にしてると思うよ。


『雅楽』で使われる楽器は主に『三管三鼓』で、あたしは『鳳笙ほうしょう』の音が大のお気に入り。『三管』の中で唯一、和音を奏でられる楽器なの。


 ちょっと興味が有って、以前『鳳笙』をかじったことが有るんだけど、これが中々大変! 


 比較的音は簡単に出せるんだけど、和音だけに手移り、指移りが超複雑で、指よりも頭が全く付いてかなかった。


 結局1ヶ月間頑張ったけど、身の程を知るに至って敢えなく断念。性格が大雑把なあたしみたいな人間には、向いて無いのかも知れないね。


 そんなあたしと違って、今演奏してる人達はしっかりと使いこなしてるんだから、みんなきっと天才なんだと思うわ。



 そんなこんなで、『雅楽』の音色に酔いしれてる人も、神秘的な『練り歩き』に見とれてる人も、揃って一心不乱にスマホを操作してる。


 あたしもそんな神秘的な世界に浸ってたちょうどその時のこと......



「向日葵......」


「なに?」


 悠真くんの声に、あたしは突然現実の世界へと舞い戻って来た。


「俺達......ちょっと目立ち過ぎじゃねぇか?」


「そう言えば......あたしもそんな気がする」


「練り歩きが居なくなっちゃったから尚更目立ってるな」


 それまではそんな神聖な儀式に見取れていた人達も、居なくなっちゃえばまた何か次のものを見たくなるらしい。


 そんな訳で、視線と言う名のスポットライトは、自ずとあたし達に向けらちゃった訳なの。何でかって言うと、



「うわぁ~、熊五郎くまごろう鹿音しかねだ!」


「きゃ~、可愛い!」


 あたしと悠真さんの2人は、そんなイメージキャラクターの着ぐるみを被ってたから。


 熊五郎と鹿音と言えば、知っての通り、御影、寂蓮、陰徳3村のゆるキャラ。


 たまたまお母さんが持ち帰ってた2体の着ぐるみを見て、賢也がこの奇策を思い付いてくれたらしい。



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