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【完結済】天国と地獄  作者: 吉田真一
第2章 向日葵の決心
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寂蓮村

 最後にお母さんが働く村役場が見えて来た。ここを通過すれば、いよいよ寂蓮村に通じる山道だわ。


 そんな村役場を流し目で見てると、どうしても4日前に行われた写生会のことがフラッシュバックしてしまう。


 今日も広場のヘリコプターは健在だ。きっと来週になれば、あたし達御影高校の生徒達が描いたヘリコプターの絵がここで展示されるんだろう。


 先生からは、『お前の絵はどうする?』って聞かれたんだけど、『今回はパスします』って答えておいた。


 泥だらけになった絵なんて展示してたら、きっとお母さんが心配すると思ったからね。あんた学校で虐められてるの? なんて具合に。


 だから今年は止めておくことにしたの。また来年頑張るわよ。


 それにしても......


 どうして嫌なことって、いつまでも頭の中に残っちゃうんだろう? 


 過去は過ぎ去ったことで、あたしが進むのは未来なんだから、とっとと忘れれちゃえばいいのに......って、心に言い聞かせてはいるんだけど。もっと強くならなきゃダメだわ。



 そんなこんなで......


 漸く村を出たあたしは、前だけを見ていよいよ寂蓮村へと向かって山道を上り始めていくのでした。


 キ~コ~、キ~コ~......


 シャンシャンシャン......


『キ~コ~』は分かるけど、『シャンシャン』は何なのって? それはね、鈴の音なの。なんと熊避けの鈴よ。


 あたしはまだ出くわしたこと無いけど、最近になってちょくちょく熊が出没するようになっちゃったの。だから鈴は必需品。村役場に行けば、いつでも無料で支給してくれる。


 因みに、『熊出没注意!』なんて看板が立てられてるけど、何をどう注意すればいいって言うの? って......疑問に思うのはあたしだけだろうか? 



 やがてそんな看板の横を通過したあたしは、いつの間にやら立ち漕ぎスタイル。別に好んでやってる訳じゃ無いけど、上り坂だから自然とそうなっちゃう。


 寂蓮村から学校に通ってる人達の自転車が、みんなギヤ付きである理由がほんとよく分かるわ。因みに、あたしの自転車にそんな文明の力は付いてない。トホホ......



 キ~コ~、キ~コ~......

  

 シャンシャンシャン......


 そんな山道を登ること20分。漸くその村の入口が見えて来た。待ちに待った寂蓮村よ。


 なんか久し振りだなぁ......


 実菜ちゃんと大地君が住む陰徳村へはよく遊びに行くんだけど、この村にはあんま知人が居ないから行く機会が殆ど無かった。多分ここへ来るのも小学生の時以来だと思うよ。


 そんなあたしが昔の記憶に浸りながら、熊避けの鈴をリュックの中にしまってると、1台の大きなトラックが横を通り過ぎて行った。


 ゴゴゴゴゴッ......


 見れば、大木が何本も荷台に積まれてる。トラックの側面には『河村組』との文字が大きく描かれてた。


 河村組?


 それって悠真さんの家の会社?!


「あっ、あの、すみません!」


 反射的にそんな大声を上げてみると、トラックは直ぐに止まってくれた。自分の大声に、思わず感心してしまった。


「なんだ?」


 助手席の窓から顔を出してくれたドライバーの風貌を見た途端、なんかヤバ~......って、ちょっと後悔。


 スキンヘッドに捻りハチマキ。眉毛がやたらと細くて顎ヒゲ付き。更に鋭い眼光とくれば、誰でも後悔するでしょうって!


 因みにあたしは、純真無垢な女子高生なんだから。



「あ、あのう......か、河村さんの、家って......ど、どこでしょうか?」


「河村だと?!」


「い、いや......別に怪しい者じゃ無いんです! す、すみません!」



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