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天国と地獄  作者: 吉田真一
第2章 向日葵の決心
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いざ出陣!

 因みに悠真さんの話によると、今日は夕方からお客さんが来るけど、それまでは家で暇してるらしい。だから、いきなり行っちゃおうと思ってね。


 ところで......夕方って何時くらいのことを言うんだろう? 


 多分夕日が照る頃なんだから、16時から17時くらい? う~ん......ちゃんと聞いとけば良かったわ。


 もう2時半だけど、まぁ間に合うでしょう。そんな楽観的予測のもと、


「いざ出陣!」


 あたしは柔軟剤香るタオルの入ったリュックを背負って、勇躍自転車のペダルを漕ぎ始めたのでした。


 もちろん向かった先は、悠真さんが暮らす寂蓮村。距離的には大したこと無いけど、上り坂が続くもんでちょっと時間が掛かる。多分30分位ってとこかな?



 それで、走り始めてから間も無くのこと。


 キ~コ~、キ~コ~......あらら、何だか油が切れたような音がする。いつもよりペダルが重い気がするわ。


 こりゃ参ったな......新しい自転車なんか絶対買えないから、大事に使ってたつもりなんだけど。


 なんて......泣き言言ってる場合じゃ無かった。もう頑張るしか無い! トホホ......



 そんな憂鬱な表情を浮かべながらも、足にターボを掛けたあたしは、山菱酒造の前を一気に通過していく。


 佳奈子......今家に居るのかしら? 

 

 正直、あたしは山菱酒造の建物をまともに見ることが出来なかった。別に悪いことしてるつもりは無いんだけど、なんか後ろめたい気がしちゃってね。


 でももう後戻りなんかするつもりは無い。ならば、ただ前だけを見て走り続けるしか無いってことよ! そんな訳で、


 キ~コ~、キ~コ~......邪念を打ち払い、あたしは無心で走り続けたのさ。


 すると今度は、賢也の通う御影中学が見えて来た。あたしに取ってもここは母校。思い出がいっぱい詰まった聖地みたいな場所なんだよな......


 ちなみに......昨晩あたしは賢也に、


 『今年の秋祭りは悠真さんと2人で行ってもいい?』って聞いてみたの。


 毎年一緒に行ってたし、今年も賢也はあたしと行きたかっただろうから、ちょっと悪い気がしてね。それで、なんて返って来るか少し怖かったんだけど、


『他の奴だったら許さないけど、悠真君だったらいいよ。僕はお母さんと行くから気にしないで』


 そんな言葉を返してくれた。さすがにちょっとウルッて来ちゃったわ。きっとこの子は、あたしなんかよりずっと大人で優しい子なんだろう。



 キ~コ~、キ~コ~......


 そんな賢也が通う中学校に後ろ髪引かれながら、あたしは更に勢いを増して畦道を突き進んで行く。


 すると今度は、あたしと悠真さんが通う御影高校の校門が見えて来た。


 そう言えば......あたしが悠真さんを意識し始めたのは、コンクールの絵が貼り出された時だった。あの時も悠真さんがあたしを修羅場から救ってくれたんだったっけ。


 そんな悠真さんと賢也は、なんかずっと前から仲良しだったような気がしてならない。


 賢也にパンチとかキックを教えてる時の悠真さん、凄く優しかった。あの時は本当の兄弟かと思っちゃったわ。


 もしかしたら悠真さんにも賢也位の年頃の弟さんが居るのかな? なんか凄く慣れてる感じがしたからね。


 結局のところ、そんな悠真さんの優しい姿を見て、あたしは彼に惹かれてったんだと思う。そう考えると、賢也が恋のキューピット? なんて、思ったりもして。


 いずれにせよあの2人は気が合うみたいだから、これからもずっと仲良くやってって欲しいと切に願うばかりだ。



 さぁ......もうちょっとよ! 


 ここからが頑張りどころね。


 キ~コ~、キ~コ~......



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