友人
「うっ、うっ、うっ......」
なおも涙を流し続ける加奈子。その姿は実に痛々しく、あたしの記憶に残る彼女の強靭さや傲慢さは微塵にも感じられなかった。
そんな痛々しい彼女の姿は、到底演技とは思えない。震え続ける身体も、そして流し続ける涙も、きっと加奈子の心の奥深くから滲み出た純なるものなのだろう。
そんな彼女の様を見れば見る程に、あたしの心に残り続けてた大きな蟠りが溶けていくような気がしてならなかった。
それはどれだけ時間が経っても、決して溶けることの無い巨大な氷河みたいなものだったんだと思う。
あの事件が起きてから早15年。
御影村も変わったし、村人も変わったし、更にあたし自身も変わった。
そして何より一番大きく変わったのは、罪を償い今日あたしの前にやって来た加奈子じゃ無いのかな。
人は誰でも過ちを犯す。
それは心を持った人であるが故に。
そして人は誰でも変わることが出来る。
なぜなら、人は心を持ってるのだから。
今日加奈子は、あたしに許して欲しいと願い、ここへやって来た。そして今、ようやくその答えが出たような気がしてる。
もしかしたら、あたしはこの時が来るのを、何年も前から密かに待ち続けてたのかも知れない。なぜならあたし達がこれから進んで行くのは、過去じゃ無くて未来だから。
そんな未来の為に、あたしはこれからも前へ進んで行こうと思う。既に戻って来てくれた村人達と、そして後れ馳せながら今日戻って来てくれたこの友人と共に......
「さぁ加奈子、起きて」
あたしは優しくそんな声を掛けた。友人に手を差し伸べるそんなあたしの顔に、もう迷いは無かった。
「ありがとう」
そう答えながら、あたしの手を握り返す友人。そんな彼女の手は驚く程に温かった。
きっとあたしは、この村の復興が成し遂げられるその日が来るまで、この友人と手を取り合い、一緒に成長して行くのだろう。
賢也......
きっとあなたも応援してくれてると思うよ。
誰よりも人らしい心を持ったあなただから。




