向日葵の決心
一夜明けて、今日あたしは一つの言葉を胸に刻んだ。
それは『許す』
そんな言葉だ。
辞書で調べると、
『過失や失敗などを責めないでおく。とがめないことにする。「あやまちを—す」』
だそうだ。
正直言って、今加奈子を許すことは出来ない。だって彼女は、あたしの大事な賢也を始め、大勢の人達を不幸に陥れたんだから。
でも加奈子がしっかりと罪を償って、時が経てばいつかあたしも彼女を許す日が来るのかも知れない。
それはもっと先になってみないと、分からないけどね。
おっと......そろそろ悠真君が目を覚ましそう。彼が目を覚ましたその瞬間から、あたしの大仕事が始まる。もう休んでる暇なんか無い。
賢也......
お母さん......
それとみんな......
どうかあたしを応援して。生涯を掛けて頑張るから。村中全ての向日葵が満開を迎えるその日が来るまでは......
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
さて、それはそれとして......
ここまで『向日葵の観察記録』を懲りずに読んで頂き、本当に有り難う。私、花咲向日葵より心から感謝申し上げます。
ところで、皆さんは楽しんで貰えたのかなぁ? ちょっと心配だったりして......ドキドキドキ。
まぁ余談はさて置き、早速話を物語に戻させて貰うね。
それでいきなりなんだけど、あたしがこの後『生涯を掛けて頑張る』と誓ったことが一体何なのか? 分かる?
ズバリその答えは、『御影村の復興』
正に、それ。
確かに大火災を起こした直接の原因は加奈子だけど、彼女をそんな鬼に変貌させてしまったのはあたし。だがらその責任は決して軽くは無いと思ってる。
ならば、賢也を初め他の犠牲になった人達の為に、あたしは何が出来るんだろう? そんな自問自答を繰り返した結果、出した答えがそれだったってこと。
とは言っても、何の財力も権力も実績も無いあたしに、そんな大それたことが出来るのかって?! きっと誰もがそう思うでしょう。
実際、最初のうちは何も出来なかったし、どうしていいのかも分からなかった。でもそんなあたしの志に感銘を受けてくれて、大きな力となってくれた人達が大勢居たの。
まずは真っ先に手を上げてくれた人達を以下に記しておくことにする。
河村材木店 代表取締役社長
河村敬吾氏
※悠真君の実父で、今やあたしの義理父に当たる人。
山菱酒造株式会社 代表取締役社長
山菱優氏
※言わずと知れた加奈子の実父。
高栄社 所属記者
斎藤宏一氏
※長年琴音を追い続けた記者さん。
悠真君のお父さんは、行政とタイアップして、有力な工務店さん達と共に御影神社を始め、燃え落ちた家屋の再建に大きく貢献してくれた。
それと加奈子のお父さんは、御影村の工場を再開させてくれて、戻って来た村民の多くを雇い入れてくれた。家だけ直しても、働き場所が無かったら生きていけないもんね。
更に傾き掛けた河村材木店に資金提供を約束通り行ってくれたりもした。
加奈子がやってしまった悪行を知り、親としての責任を痛感して、復興に取り組む決心をしてくれたそうな。




