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【完結済】天国と地獄  作者: 吉田真一
第7章 向日葵の幸せ
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最後の感情......それは?!

 残念なことにその壁は、天よりも高く、そして鋼鉄よりも固く、更には慈悲の心を持たぬ氷よりも冷たい壁だった。



 ああ、もうダメ......やっぱも無理だ。熱くてもう目すら開けてられない。このまま顔を焼かれて、終わっちゃうんだろうな......


 悔しい......


 本当に悔しい......


 でも冷静に考えちゃうと、なんであたしがこんな目に遭わなきゃならないの?


 あたしが何したって言うの?!


 それと......あたしのことをあなたは泥棒ネコって言ってたけど、むしろ泥棒ネコは加奈子......あなたの方じゃない?


 いや、絶対そうだ!



 今思い返してみれば......


 5年前、山村琴音と名前を変えて以降、あたしは4つの感情を時が経つと共に少しづつ取り戻していった。


 霧島翔子さんや山村智美ちゃんと心が通じ合えることが出来て、あの時あたしは『喜び』と言う感情を思い出すことが出来た。


 次に純喫茶スイートピーで高木隆美さん達と共に働くことが出来て、今度は『楽しい』と言う感情を思い出すことが出来た。


 更に母の死を体験して、図らずもあたしは『哀しい』と言う感情を思い出すことが出来た。


 そして今、この苦境に晒されたことにより、ようやくあたしは気付いてしまった。それはまだ1つだけ思い出して無い感情が残ってたって言うこと。


 そして今正に、あたしはその残された最後の感情を呼びもどそうとしてる。それはどの感情よりもエネルギッシュで、何よりも壊滅的なそんな感情をね......



 やがて顔までの距離10cm


「この泥棒ネコが......いい気味だわ」


(またあたしのことをそう呼んだわね!)



 ブルブルブル......俄にあたしの身体が震え始めて来た。あたしはこの身体の震えの意味を分かってる。



「熱いでしょう? 自分のしたことをしっかり後悔しなさい。フッ、フッ、フッ」


(後悔するのはあなたの方よ!)



 なので、どんなに松明の炎を顔に近付けられても、ちっとも熱く無かった。きっとあたしの身体が炎よりも熱く燃え上がってたからなんだろう。



 そして顔までの距離0cm


「地獄へ堕ちなさい!」


 加奈子は遂に松明の炎をあたしの顔に!



「いいえ......」


 やがで炎があたしの前髪に燃え移る! それでもあたしは全然熱く無かった。



「地獄へ堕ちるのは......」


 なので両腕と両足の力こぶを極限まで膨らませて、あたしは一気に立ち上がった!



「あんたの方よ!」


 バシッ! 


「えっ、な、なに?!」



 気付けば......


 あたしの手はいつの間にやら荒くれ者の手を振りほどき、加奈子の左頬を力任せにひっぱたいてた。


 その拍子に、松明は加奈子の手から解放されて明後日の方向に吹っ飛んでる。それ程までにあたしが放った一撃は強烈だったんだろうに。



 そう......あたしが最後に思い出した感情。


 それは正に『怒り』


 そしてそれは他の追随を許さぬ無限大のパワーを秘めたものだったに違い無い。



「あんただけは......絶対に許さない。よくも神社に火を放ってくれたわね! そのせいで、そのせいで......賢也は、賢也は、死んじゃったんだから!」



 その時、あたしは自分で自分の制御が全く出来なくなってることに気付いてた。


 でも今拾い上げたばかりの松明で、これから自分が何をしようとしてるのかだけは分かってる。


 もう止めることなんか誰にも出来やしない。なぜなら今あたしは、本気で怒ってるんだから!



「止めろ向日葵! それじゃ君も加奈子と一緒だぞ!」



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