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【完結済】天国と地獄  作者: 吉田真一
第7章 向日葵の幸せ
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不時着

 そうともなれば、


「向日葵、あと10分で着くぞ。良かったな!」


「ええっ? そんな直ぐに?!」



 その時、時刻は18時20分。それはまるで、示し合わせたかのようなタイミング。


 結婚式開始と同時に乱入して『ちょっと待った!』をやるってことだ。


 あたしはテロリストか?


 多分新婦側からしてみたら、そう言うことになるんだろう。


 でもどんなに考えたところで、今更引くことなんか出来やしない。ならばもう腹を括るしか無かった。行き当たりばったりだ。


 そんな訳で、少しでもパニックにならないよう、事前に分かるだけの情報は仕入れておこうと思った。



「大地君、着陸はどの辺りになるの?」


「知るかそんなもん。適当だ」


「あら、そう......」



 そんな大地君の反応に、あたしが全てにおいて『行き当たりばったり』を覚悟したその時のことだった。



 ビー、ビー、ビーッ!


 突然、鼓膜を破る程の大きな警報音が!



「ど、どうしたの?!」


「マ、マジかよ......」


「だからどうしたのって!」


「聞いて驚くなよ」


「内容によりけりだと思う」


「ガス欠だ。ハッ、ハッ、ハッ!」


「えっ? 声が小さくてよく聞こえなかったんだけど」


「ガス欠だって言ったんだよ! 嵐の中フルパワーで飛んでたんだから仕方無いさ。とにかく掴まってろ。不時着だ!」


「だってもう直ぐ着くんでしょう?! 何とか行け無いの?!」



 見ればどんどん高度が下がってる。もうビルだってはっきり見えてるし、信号の色すら識別が出来る程だ。



「どこが帝徳ホテルの建物か何て分かる訳無いだろ?! 俺だって初めて飛んで来たんだから。もうそんなこと言ってる場合じゃ無い。どっか不時着出来る場所は無いのか?!」


 不時着出来る場所がどう言う所か全然分からなかったけど、取り敢えず目に付いた所をあたしは声に出してみた。


「大地君、あそこに大きな池が有るみたいだけど、そこはどう?」


 気付けばあたしは大きな池を指指した。結構大きな庭園の中に有るみたいで、あちこち光輝いてるから見易いのかな? って思って。


「池? よし、そこに不時着するぞ! 街中で爆発するよりはそこで爆発した方が被害が少ないだろ。しっかり掴まってろ!」


「ば、爆発?! わ、分かった!」



 この時の時刻は18:29分。


 もし不時着に失敗したら、賢也と一緒に天国へ行けばいいと思った。この場に及んで投げやりなあたしがそこに居たのでした。



 そして遂にその瞬間が!


 グウォーン......


「うわぁ、南無三!」


「落ちる~!」



 バシャ~ン......


 ドドドドド......


 ブクブクブク......



 ※ ※ ※ ※ ※ ※


 一方その頃、当の結婚式会場では......


 ブウォーン、


 ブウォーン、


 ブウォーン......


 バタバタバタ......


 ガタガタガタ......


 俺はもちろんのこと、ここに居合わせてた誰もが天上から轟くそんな音に気付いてただろうな。


 それは神父だって同じ筈だ。でも神父は早く家に帰りたいから、そんなの無視することに決めたらしい。



「それでは、互いに向き合って」


 それって、指輪交換の合図だろ? 


 もう後が無いってことじゃねぇか!


 頼む......何でもいいから止めてくれ!


 雷でも、大地震でも、ミサイルでも、テロリストでも何でも構わん!



 暑くも無いのに全身の毛穴から汗が吹き出して来た。生まれてこの方20余年。正直ここまで焦ったことは無い。


 御影神社のお地蔵様、

 

 今こそ俺の願いを叶えてくれ


 俺の為に、


 向日葵の為に、


 そして、


 賢也の為に!


 どうかこの結婚式を


 止めてくれ!!!



 すると......



 バタバタバタッ!


 ゴゴゴゴゴッ!



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