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【完結済】天国と地獄  作者: 吉田真一
第7章 向日葵の幸せ
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大阪の街

「本日は何卒宜しくお願い申し上げます。早速で恐縮なのですが......今回司会をお願いしている紅白司会者の有吉田弘之様と橋木環菜様のヘリコプター入場が天候の理由で通常入場に変更となりましたことをご報告させて頂きます」


「ええ、そうなんですか?」


 どうやら一番がっかりしてるのはフィアンセだったらしい。きっとそんなハイコストな人選をしたのも彼女だったんだろう。



「まぁ、天候のせいなら仕方無いじゃないか。それでもちゃんと司会者さん達が来てくれるんだからそれでいいだろう」


「まぁ、そうね......」


 そんな言葉とは裏腹に、顔は全く納得してない新婦。とにかく全てが自分の思い通りにいかないと、気が済まない質だ。



 そんなこんなで......いよいよ結婚式とやらが始まってしまうらしい。


「それでは、間もなく式が始まります。葉加瀬金太郎様と高嶋ちき子様のバイオリンの生演奏が始まりましたら入場となります」


 葉加瀬金太郎?! 


 高嶋ちき子?! 


 奴らはそんなに暇なのか?!



 すると何やら鋭い視線を感じたから思わす振り返ってみると、そこには不敵な笑みを浮かべた新婦が今にも口を動かし始めようとしてる。


「悠真君、いよいよね。これがあたしに取っての本当の秋祭り。5年前のやり直しよ。もう2度と誰にも邪魔させないわ。加奈子は幸せよ」


「......」



 この時、俺の心も身体も、この執念深き女の呪縛から逃れる術は無かった。


 もし俺を呪縛から解き放つことが出来る人間が居るとしたなら、それは黄色い大きな花を咲かせた向日葵以外には考えられない。


 そんな俺の女神様も今やどこに居るのか分からないし、俺のことを覚えているのかすらも分からなかった。にも関わらず、御影村へ招待状なんぞを送った行動は、きっと最後の悪足掻きだったんだろう。


 まぁ、見てくれてる訳も無いんだけどな......



 やがてそんな俺の絶望を他所に、清らかなバイオリンの音色が会場内にとどろき始めていった。いよいよ始まりってことだ。


「さぁみんな、新郎新婦の入場だぞ!」


「拍手でお迎えしましょう!」



 こうして俺のハルマゲドンは、遂に幕を降ろしたのでした。


 GOOD BYE MY LIFE


 そして、


 GOOD BYE 向日葵......



 その一方......


 そんな自分の人生を諦めた人間も居れば、まだまだ諦めて無い人間が居たりもする。


 そして後者のまだまだ諦めて無い人間達は、今どこに居たのかと言うと......



「うわぁ、落ちるっ!」


「まだまだっ!」



 上空300m。積乱雲の中に居た。それは正にアクション映画の世界。


 悠真が待つその場所へと必死に突き進んでいた訳では有るのだが、とにかく落ち掛けたり、吹っ飛ばされたりの連続だった。



「だ、大丈夫なの?!」


「あとちょっとで雨雲を抜ける。もう少しの辛抱だ!」


「分かった。信じるよ!」


「多分だけどな」


「あらら......」



 そんな鬼気迫る会話を繰り返しているうちにも、やがては雲の切れ目から大きな街明かりが見えて来る。



「もしかしてこれって......」


「大阪の街だ!」



 ※ ※ ※ ※ ※ ※


 どうやら......


 あたし達を乗せたヘリコプターは、東へと進む雨雲を追い抜いてるらしい。やっぱ文明の力は凄いなぁって、この場に及んでつくづく感心してしまった。



「これで何とか行けそうね」


「おう、大丈夫だと思うぜ」



 でも感心してる場合じゃ無かった。なぜならヘリコプターが墜落しないってことは、悠真君の結婚式にあたしが乱入するってことになるんだから。


 ど、どうしよう......


 正直ここまでは、ヘリコプターが落ちるか落ちないかの瀬戸際だったから、その先のこと何か考える余裕すら無かった。


 でも今や雨雲を抜けて、大阪の街明かりが見える所までやって来ちゃってる。



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