表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】天国と地獄  作者: 吉田真一
第7章 向日葵の幸せ
155/178

庭園

「大阪までは距離200Kmで、ヘリは大体時速200Kmだから理屈上は間に合う計算だ。


 でも街のど真ん中に不時着する訳だから大騒ぎになるだろうし、そもそも不時着出来る場所が有るのかも分からん。それと......ちょっと雲行きが怪しいんだよな」



 大地君の表情が空と同様に暗雲が立ち込めたその時のことだった。


 ピカッ! 


 ドドドドッ......


 突然目の前が真っ白に染まる。


「かっ、雷?!」


「しかも、凄い積乱雲だ」


「だっ、大丈夫なの?!」


「わ、分からん」



 厚い積乱雲で覆い尽くされた大空は、いつの間にかその光を失って、そこへと突き進むヘリコプターは、まるでブラックホールに吸い込まれて行くかのようだった。



「迂回は出来ないの?」


「出来るけど、式に間に合わなくなるな」


「じゃあ、どうするの?」


「突っ込むしか無いだろ」


「......」



 大地君の話だと、ヤバくなったら直ぐに戻るから大丈夫! ってことらしいけど......本当に大丈夫なのかな?


 あたしはヘリコプターに関しては素人だし、少なくとも素人じゃ無い大地君が大丈夫って言ってるんだから、今はそれを信じるしか無いと思った。そんなこんなで......



「向日葵、しっかり掴まってろ!」


「あたしは大丈夫。頑張って!」


「ラジャー!」



 時刻は間も無く5時半。あと1時間もすれば、悠真君の結婚式が始まる。


 大地君のお陰で、何とかここまでやっては来れたけど、神様は最後に大きな壁をあたしに与えたかったらしい。それは『大自然』......そんな名の巨大壁だ。


 果たして最後に来て、そんな大きな壁を越えることが出来るのだろうか? 多分その答えを知ってる者が居るとするならば、きっと神様だけなんだろう。


 今のあたしに出来ることが有るとするならば、ヘリコプターにしっかり掴まってることと、


 神様、それと賢也......


 どうかあたし達を守って下さい。


 祈るくらいのものだった。



 ※ ※ ※ ※ ※ ※


 10月20日(日)18:00


 一方その頃、


 大阪市内、帝徳ホテル1階、桜の庭園では......



「いやぁ、凄い人の数だな。うじゃうじゃ居るぞ」


「やっぱ一流企業の跡取り同士の結婚ともなりゃ、こんなもんなんだろ」


「軽く見積もっても300人は居るな。まぁ、それはそれとして......」


「どうした?」


「俺達は何でこんな格好してんだ?」


「ハッ、ハッ、ハッ、別にいいじゃんか。滅多にこんなの着る機会無いんだから。お前結構似合ってぞ!」


「そっ、そうか?」



『企業関係者』そう書かれた受付の列に並ぶそんな2人の男性はなぜか浴衣姿。


 よくよく見渡してみれば、来賓客はもとより、式場スタッフ、ホテル従業員、その他清掃員も含め全ての人達が色取り取りの浴衣を纏ってる。



「なんか新郎新婦の意向で、今回の結婚式のコンセプトは秋祭りらしいぞ。まぁこれも仕事の一環と思って付き合うしか無いな。ハッ、ハッ、ハッ」


「春だけど秋祭り? なるほど......だから庭園にいっぱい屋台が建ってるんだな。ならば式の開始が夜なのも分かる気がする」


「祭りに屋台って言えば夜だもんな。それはそうと、色々サプライズ演出が有るそうだぜ」


「サプライズ演出? 例えば神主さんがヘリコプターで登場して来るとか?」


「全然有るかも知れんな。なんせたった1時間程度の式でこれだけ金掛けてるんだから。全く金持ちの金の使い方は理解出来んよ」



 見れば庭園の周りには、弧を描くようにして屋台が連なってる。射的、金魚すくい、わた飴、りんご飴、などなど......


 どれも普通に営業を開始してて、早く着いた子供達やらカップルやらがいち早く『秋祭り』を満喫してる様子だ。


 そんな大きな庭園の大きくて底深い池の前には、清水の舞台を真似たステージが。そこには無数のバイプ椅子が置かれてる。きっと時間になれば、ここで式が厳かに行われるのだろう。


 もはやホテルの庭園は、その隅々までが完全なる田舎村のお祭り広場と化してたのである。


 それは主催者側の徹底したこだわりと言わざるを得なかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ