夢
そんな無鉄砲なあたしが朽ち果てた玄関扉を乱暴に開け放ったその時のこと。
どうやら神様は、あたしに天罰を下したかったらしい。
グラグラグラ......
「あっ、危ない!」
ガザガサガサ......
ゴトゴトゴトッ!
「キャーッ!」
「ひっ、向日葵!!!」
............
............
............
気付けば......
あたしは......
いつもの世界に......
迷い込んでた。
よく夜に見るそれのこと。
※ ※ ※ ※ ※ ※
お地蔵様......
何であなたは
いつもあたしの夢に
現れるの?
そして何でいつも
悲しそうな顔してるの?
あたしが
不幸だから?
あたしが
不憫だから?
だったら
そんな心配いらない
だってあたしは
自分の未来を切り開く為に
今日この地にやって来たんだから
あたしは
自分の未来を切り開く為に
自分の過去に立ち向かう決意で
ここへやって来たんだから
お地蔵様......
あなたは5年前に起きた
事件のことを知ってるの?
なんでこの村が
こんなことになっちゃったのか
知ってるの?
あたし
それを知るのが
とても恐いの
でもそれを知らなきゃ
先に進めない
だから
これからお父さんに会って
全てを知るつもり
恐い
本当に恐い
でもあたしは
戦い続ける
向日葵が
大きな花を咲かせる為に
戦い抜いてみせる!
やがて......
いつものように
天上から
目映い光が差し込んで来た
そして今日もその光は
間違いなく
お地蔵様の足元を
照らし出してた
その光の意味は
今も分からない
でもきっと
何か深い意味が
有るんだろう
そしてそんな光は
全ての世界を包み込み
やがて夢は
終わりを遂げた......
※ ※ ※ ※ ※ ※
それからどれだけの時間が経ったのか?
あたしは全く想像がつかなかった。
やがて、
「うっ、うっ......」
どうやら......夢から覚めたみたい。
なぜそれが分かったのかと言うと、涙が頬を伝ってたから。もうすっかりルーティン化してる流れだ。
ちなみに......ここはどこなの? それは率直な疑問。
半信半疑で重い目蓋を開けてみると、まず真っ先に真っ白の天井が見えた。でも見慣れたいつもの天井じゃ無い。
今度は首を動かしてみる。すると畳が見えた。どうやら和室の中らしい。初めて見る景色。そんな和室の中で、今あたしはフカフカの布団にくるまってる。
謎? 謎? 謎の世界......
でも少しだけ頭が落ち着いて来ると、アバウトな記憶が甦って来た。
確か大地君と村のメインロードを歩いてて、どっかの家に駆け込んだような......
何か真っ黒で今にも崩れそうな家だった気がするんだけど......
花咲家......
花咲家?
そ、そうだ!
あたしが住んでた家を見付けたんだ!
だんだん思い出して来たわ。
そう......それで、表札見て......
賢也?
賢也??
賢也???
バサッ!
気付けば、無意識のうちに布団から飛び起きていた。
「けっ、賢也って誰?! え、あ、い、痛い!」
そんな大声を張り上げると同時に、頭がやたらと痛むことに、今更ながらに気付いてしまうあたしだった。すると、
「賢也だと? そんな奴はおらん」
!!!
「だ、だれっ?」
とにかく目が覚めた途端、驚きの連続だった。突然後ろからそんな声を掛けられて、気付けばあたしは反射的に立ち上がってる。
「俺が誰かだって? この家の主だ。何か文句有んのか? ウェ......プププ」
見た目60才前後。痩せこけた白髪頭の初老は身体をフラフラさせながら、そんな言葉をあたしに投げ飛ばして来た。
とにかくやたらと酒臭い。酔っ払ってることは間違い無さそうだ。
そんな初老に警戒の視線を送りつつも、あたしは三面鏡に映る自分の姿を見てハッとしてしまった。
この村へやって来た時のあたしの衣装は、言うまでも無くリクルートスーツ。でも今そんな三面鏡に映る自分の姿は、全く別ものだったから。




