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【完結済】天国と地獄  作者: 吉田真一
第5章 琴音の覚醒
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記憶

 でもその反面、『御影村の大火災』そんな言葉が頭を過った途端、全身の血が凍り付きそうになってしまう。正直、御影村へ行くのは恐くてならなかった。


「おい向日葵、お前寒いのか? 震えてるみたいだけど......」


「大丈夫、暑くて震えてるんだから」


「そっか......よし、そこのカーブを曲がればもう御影村だ。心の準備はいいか?」


「もちろん」



 時刻は間もなく11時。


 いよいよあたしは、生まれ故郷のその地に足を踏み入れて行くのでした。



  ※ ※ ※ ※ ※ ※


 今まで【向日葵の観察記録】をつけるのは、必ずその日の寝る前って決めてた。でも今あたしはまだ昼間なのにもうそのペンを走らせようとしている。その理由は、こんなことが頭を過ったから。


 それは山村琴音(今のあたし)の脳に花咲向日葵の記憶が残って無いってことは、あたしがこの先花咲向日葵に戻ったら、山村琴音(今のあたし)の記憶が無くなるかも? って思ったから。


 それって......


 今のあたしが死ぬってこと?


 そうとも言えるんじゃ無いのかな? 


 その可能性を考えて、山村琴音として一応最後の記録をここに残しておきたいと思った次第。まぁ、実際のところは戻ってみないと分からないけど......


 なので御影村へ入るすぐ手前で、あたしは大地君にバイクを止めて貰った。それでこれから以後に記録を認めておきたいと思う。


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【向日葵の観察記録】


 4月19日(土)11時


 今朝方智美ちゃんが、向日葵の芽の写真をLINEで送ってくれた。


 昨日より少しだけ成長したそんな芽を見て、あたしの心も少しだけ成長したような気がした。


 果たして地上に顔を出したそんな芽は、地中に居た時のことを覚えてるんだろうか?


 この芽が更に成長して大きな花を咲かせた時、花は芽だった今日のことを覚えてるんだろうか?


 あたしは今日、一つの言葉を覚えた。


 その言葉とは、『卒業』


 今日あたしは山村琴音から卒業する為にここへやって来た。その気持ちに偽りは無い。


 だからあたしは絶対に泣かない。


 例えあたしが、山村琴音を忘れてしまったとしても......


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