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【完結済】天国と地獄  作者: 吉田真一
第5章 琴音の覚醒
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麓の駅

 いつの間にやら3人揃って腕を組み首を縦に振ってる。どうやらあたしはこの3人の明るい女子高生達と『仲間』と言う関係になったらしい。



 雰囲気も明るくてあたしとは全然違う。

 年齢も離れててあたしとは全然違う。

 口数も多くてあたしとは全然違う。


 更に......

 身に付けているものも全然違った。


 キャラクターが描かれた派手な腕時計。

 キーホルダーがいっぱいぶら下がった鞄。

 可愛らしい花形のイヤリング。

 そして、薄ビンク色の伊達メガネ。



 正直......年齢も、性格も、身に付けてるものも全てが違う女子高生達に『仲間』と言われて嫌な気持ちになるかと思いきや、ちょっとばかり嬉しい気持ちになってる自分が不思議でならない。



 そんな女子高生達が、この後一体何を言い出すのかと思えば、


「ちょっとお姉さん、このメガネ掛けてみようよ!」


 なんと! そんな奇想天外な提案だったのである。


 正直、それだけは勘弁して欲しい......何て思っているうちにも、見ればもう伊達メガネを外してるし。


「お姉さん絶対ピンク似合うって! ヘアークリップとお揃いで凄くいいと思うよ」


「彼氏が居ない連合の仲間として、あたしもそれをお勧めするわ」


 どうやらあたしは、どこへ行っても絡まれる体質らしい。


 とは言っても、彼女の屈託の無い笑顔を見れば、悪意の無いことは明らか。ただ好奇心が旺盛なだけなんだろう。


 それといつからあたしが『彼氏が居ない連合』のメンバーになったのかは不明だけど、彼女の話の中で再び出現した『仲間』と言う言葉がどうも頭から離れなかった。



「ごめん......気悪くした?」


「気悪く......して......無い」


 いつの間にやらあたしは、彼女の手から伊達メガネを受け取ってる。


 それで......掛けてみた。えいって感じで。



「うわぁ、メッチャ可愛いじゃん!」


「やっぱお姉さんピンク似合うって!」


「あたしが付けてるより、全然似合ってるわ!」



 結局......


 そんな女子高生達は、あたしの鼻の上に薄ピンク色の伊達メガネを置き去りにしたまま、最寄りの駅で下車してしまった。


 返すと言ったら、断られた。お金を払うと言ったら、悲しい顔された。


 なので......遂に麓の駅で下車を成し遂げた今でも、あたしはそんな伊達メガネを外さずにいる。


 なぜなら......この伊達メガネを外してしまうと、せっかく神様が与えてくれたこの『仲間』とのご縁を失ってしまうような気がしたから。


 それはきっと、あたしの真っ黒な心に再びピンク色の絵の具が注ぎ込まれた瞬間だったに違いない。


 ※ ※ ※ ※ ※ ※


 そして......


 そんなピンクの伊達メガネとヘアークリップに彩られたあたしは、この後最後の交通機関を利用することとなる。


 バスもしくはタクシーで山道を10キロ程登れば、いよいよ最終目的地の御影村だ。



 時刻はちょうど9時を回ったところ。


 あたしは改札口を出たところで、一つ大きく深呼吸した。きっと肺がこの澄んだ空気を待ち望んでいたんだろう。


 見れば周囲は大小様々な山に囲まれてる。地図で見る限り、それら山々の向こう側は日本海。


 きっとこの辺りの高地は、冬場沢山雪が降るんだろう。瓦屋根の家が圧倒的に多いからそうなんだと思った次第。


 ちなみに駅前だけに限って言えば、それなりに拓けてる感じ。露骨に田舎って雰囲気でも無かった。


 駅前はちょっとしたロータリーになってるし、タクシー乗り場には今も数台のタクシーがお客さんを待ち受けてる。


 更にロータリーの向こう側には大きなスーパーが有って、その横には東京でも見掛ける服飾のチェーン店などもちらほら。



 そんな初めて見る景色にあたしが興味津々の眼差しを向けてたその時のこと。


 グー......


 何やら変な音が。どうやらそんな音の発信源は、あたしのお腹だったみたい。


 思い返してみれば、昨日の夜から何も食べて無かった。と言うよりかは、食べることを忘れてたって言った方が正しいんだと思う。



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