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【完結済】天国と地獄  作者: 吉田真一
第5章 琴音の覚醒
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寂しい

 お母さんに会いたい......


 でも、もう二度と会えない......


 気付けば、目から自然と熱いものが込み上げてた。


「うっ、うっ、うっ......」


 それはあたしがこれまでに体験したことの無い切なき感情なるものが、産声を上げた瞬間だったに違い無い。


 苦しくも有り、悲しくも有り、そして痛くも有り......胸が締め付けられるような耐え難い感触だ。



 みんな......何で居てくれないの?


 今あたしの脳は、明らかに更なる進化を来し始めてるんだと思う。


 毎日1つ1つ、ゆっくりではあるけれど、確実にあたしは人間らしさを取り戻してるような気がしてる。


 生前お母さんは、


『辛い思いを沢山した人程、人に優しく接することが出来る』


 って言ってた。


 ならばあたしは甘んじてこの辛い思いを受け入れようと思う。決して逃げようとは思わない。


 なぜなら『優しさ』こそが『人間らしさ』なのだから......


 みんなと同じ普通の人間になりたい。思いはただそれだけだった。



 やがてあたしは、スーツの袖で荒々しく涙を拭う。


 さぁ、もう寝よう......しっかり充電しとかなくっちゃ。未来ある明日の為に。


 お母さん......お休み。


 みんな......お休み。


 そして、ありがとう。


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【向日葵の観察記録】


 4月18日(金)


 今日出発の朝、あたしは向日葵の芽をいつもよりじっくりと観察した。


 しばらく見れないから、目に焼き付けておこうと思って。


 芽は日に日に大きくなってる。


 明日からも智美ちゃんがしっかり水をあげてくれるそうだから、この後更に大きく育っていくことだろう。


 今日あたしは一つの感情を覚えた。


 それは『寂しい』と言う感情。


 辞書で調べたら、


『仲間や相手になる人がいなくて心細い』


 だそうだ。


 きっと今あたしは、一緒に居てくれた人達が居なくなって心細いんだと思う。


 もしかしたら、花咲向日葵と言う過去のあたしの周りには、常に人がいっぱい居たのかも知れない。


 だから今日寂しくて、寂しくて、涙が出てしまったような気がする。


 でもあたしは寂しくなっても、人間らしく前に進み続けるつもり。


 花咲向日葵のような優しい人間を取り戻すその日が来るまでは......


 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

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