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【完結済】天国と地獄  作者: 吉田真一
第5章 琴音の覚醒
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新聞

 図書館と言う場所も弁えず、ついつい大声になってしまう翔子だった。


「ゴホンッ!」


 するとすかさず常連中年男性が咳払い砲を打ち込んで来る。確かに図書館で大声はちと不謹慎だ。


「ごめん、ごめん......変なこと言っちゃって」


 途端に小声になる翔子だった。



「あたし......放火なんか......しない」


 一方、そんな風に語った琴音の表情は、心なしか暗く見えてならない。



 ちなみにこの時、翔子は柄にもなく少し後悔してた。


 もしかしたら自分は、ただのエゴで琴音に辛い思いを強いてるだけではないのか? ふとそんな気持ちが過ったからだ。


 なので素直に、


「今日はもう帰ろう。続きはまた今度ね」


 そんなジャブを送ってみた。


 ところがここで、琴音は意外とも言える反応を見せたのである。


「御影村の祟り......あたし......知りたい」


 ちょっと驚きだ。


「え? そ、そうなの?! わ、分かったわ!」


 突如息を吹き替えした翔子は、


 スタスタスタ......


 一体どこへ行ったのかと思えば、少し黄ばんだ新聞をピックアップして直ぐに戻って来た。どうやらそれが、お目当ての品だったらしい。



 『島根県の山村で火災発生。秋祭りを襲った悲劇。死傷者の数100人以上』


 日付は、2018年10月10日の月曜。


 それは1面トップにそんな見出しが掲げられた新聞だったのである。


「じゃあ読み上げるわよ。準備はいい?」


「は......い......」


 それがどんな記事だったのかと言うと......


 こんなだった。


 ※ ※ ※ ※ ※ ※


『昨日10月9日(日)夜未明、御影村の最奥に位置する御影神社で発生した火災は折からの強風で一気に燃え広がり、1日経った今でも鎮火には至らず現在も消火活動が続いている。


 この時点で分かっているだけでも死者数10名、負傷者数90余名、行方不明者を含めると、この後更に犠牲者の数は増え続けていくものと思われる。


 現在警察と消防は火災の原因を調査中ではあるが、複数の目撃者の証言によると、若者達数名の使用していた松明の火が御影神社の木造建築に引火し、やがてその火は同神社が保有していたプロパンボンベ置き場へ到達。そして大爆発を引き起こしたようだ。


 折しもこの日は御影、陰徳、寂蓮、3村の共同運営による『御影神社秋祭り』が行われており、県内外から訪れた千人以上が被災した模様。


 火は今も延燃を続け、広範囲における森林火災へと発展を遂げつつある。現在県外からの消防隊も応援に駆け付け、昼夜を呈して消火活動に当たっている模様。


 なお当時松明を手にしていた若者達は地元の高校生との証言があり、現在首謀者の数名は重大な怪我を負って治療中。その為、回復を待って聞き取り調査を行う予定となっている。


 放火の可能性も含め現在警察は火元付近の調査を行っているが、同高校生達の聞き取りが行われれば、火災の全貌が明らかになるものと期待を寄せている。


 なお地元住民達は、本来村の安全と豊作を祈願する為の『秋祭り』でこんな惨事が起きてしまったことに深い悲しみを覚えており、今はただ負傷者の回復を祈るだけと、皆揃って落胆の意を示している。


 一方、一部の村民は高校生達が治療を行っている麓の病院に集結し、責任追及の声を上げている様子。


 警察は二次災害防止にも重点を置き、20人体制で当該病院の警護を行いつつ、村民達に冷静な行動を呼び掛けている。


 長閑で平和な山村を突如襲った今回の大火災。犠牲になった方々のご冥福を祈ると共に、怪我をされた方々の一早い回復を祈るばかりだ』


 ※ ※ ※ ※ ※ ※



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