あたしの引退宣言
「どうぞ、ご勝手に」でしょうけど(笑)
夜中にふと目がさめて
うろおぼえの夢にわけもわからず
もらい泣きしながら
詩を描けなくなったなら
あたしはいさぎよく引退しよう
サブスクで昔みてたアニメの
主題歌だけをはしごしてるうちに
なんだか ぐぐってこみあげてきて
笑い泣きしながら熱唱しなくなったら
あたしはあとくされなく引退しよう
胸の奥にあるこたつのすみっこで
最愛のねこの面影がまるまってるすがたを
失くしてしまったり
しめった花火のにおいがする夏の夜に
むずがゆいうずうずを感じなくなったり
昼空には雲を 夜空には月を
みあげることも忘れてしまって
肌荒れしたアスファルトに
視線を這わせて歩くようになったら
あたしはすぐにでも 引退せざるをえないのだ
けれども いまもなお
週刊少年ドリームズを
毎週 楽しみにすることはなくなったかわりに
コミックスはちゃんと買い集めるし
金髪には染めずに 長さも肩までになったけど
ヘヴィメタルは
踵でリズムを 指でリフを刻んでいるし
群青と青紫のあいだにある
いちばん深いパープルを
あたしはいつだってさがしてる
あたしがこんないきものであるうちは
もうしばらくのあいだ
のさばらせてもらうつもり
なんなら あたしにしか描けないうたが
あたしにくちずさまれるのを
待ってるんだって 変な使命感さえある
それは錯覚で 妄想で 何より確信で
だとしたら どうやら まだまだ
あたしは引退させてもらえないらしい
まだ、しばらくは。