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7. 浮気の報告

第一王子…つまりライト王子の兄に呼ばれてビオラは応接室に居た。

何故かビオラの友人のゼクス嬢と一緒に。


「ゼクス様は何故こちらに…?」

「あなたの婚約者であるライト王子がのらりくらりとしているからですわ。」


ゼクスはそう言った後紅茶を一口飲んだ後、マナーを熟知しているゼクス嬢にしては少々乱雑な置き方でテーブルにコップを戻した。


「この間も私に声をかけた後で家門も低い女と花を買っているのを見ましたわ。」

「そうですか…。」


ビオラはしょんぼりとした様子でコップで手を温めながら紅茶を眺めた。


「悔しくないんですの!?」

「悔しいですわ!でも私も自信が無くて…。」

「そうですわよね、悔しいですわよね…。」


ゼクスはうわーんと泣きつくビオラを抱き止め頭を撫でながらキッと第一王子スカーを見た。


「そして、スカー様はそんな王子を許すのですか!?皆の手本でなくてはならない王子があんな事ばかり繰り返していては国の品位が下がりますわ!!」

「はは…」


スカー王子は頭を掻いて困惑した表情を浮かべた。優しいスカー王子はどうも気性の荒いゼクスとは相性が悪い。そして一応スカー王子とゼクスは一度は婚約の話も出た仲である。


「ライトは僕と後継者争いをしたくないから、あえてあんな事をしているんですよ。」

「じゃあせめてビオラにはきちんと説明するのが筋でしょう!」

「え…ライトはビオラ嬢に説明していないのですか?」


スカー王子は困惑した顔でビオラの顔を伺うとビオラはしょんぼりとした顔をした。


「えぇ、何にも…何にも教えてくれませんわ。聞いてもデザートではぐらかされますの。」

「うーん…それじゃあただの浮気ですね…。」

「スカー王子が咎めなかったせいですわ!きちんとビオラを守ってあげてくださいませ!では私はこの後お屋敷でお客様をお相手しなくてはいけませんので失礼しますわ。」


ゼクスが怒りながら部屋から出ていくと、スカー王子はふ〜っと息を吐いた。


「ビオラ嬢…君には本当に迷惑をかけましたね。」

「いえ、実は私…思い当たる事があって…」


しょんぼりと下を向いているビオラを見ながらスカー王子がようやく紅茶を一口飲んだ。先程はゼクスに圧倒されて飲めなかったのだ。しかし


「ライト王子の破廉恥さについていけなくていつも逃げちゃうんです…」


という思わぬビオラの発言に紅茶が器官に入ってしまった。


「っごほっ!」

「っ!大丈夫ですか?!」

「大丈夫ですよ…。そして、そんな事で自信を無くす必要もありません。」


動揺しながらも優雅にティーカップを置いたスカー王子は視線を下に落としたビオラを元気づける為ビオラの横に座り、ビオラの手を取った。


「あなたはまだ未婚なのですから、寧ろ身を守るくらいで丁度よいのですよ。ライトには僕から注意しておきましょう。」

「ありがとうございます、スカー王子。」


と話がまとまった所で扉が勢いよく開いた。

ライト王子は二人を見ると叫んだ。


「ビオラーッ!!」

「あら、ライト王子。」

「こんなところで二人きりなんて…危ないじゃないか!」


さっとライト王子は二人を引き離すとビオラを扉の外に追いやろうとした。


「さぁ、ビオラはもう帰りなさい。」

「嫌ですわ!チョコビスケットをまだ食べてませんもの!」


ビオラはやっぱりお菓子に弱い。そしてライト王子はビオラに弱いので渋々スカー王子の向かい側に座らせた。

ビオラが美味しそうに食べ始めるとライト王子はスカー王子の隣に座りビオラに聞こえないように小さな声で話しかけた。


「兄さん…ビオラに何の用で呼んだのですか。僕の婚約者を勝手に呼び出さないで頂きたい。」

「ゼクス嬢が君のことで怒っていたのでビオラ嬢を呼んだだけですよ。」

「僕の事で…?町中で声を掛けたのがいけなかったのかな…。」

「婚約者がいながら他の女性と二人きりで出かけていたからビオラが可哀想だと怒っていました。」


ライト王子がちらっとビオラを見るとビオラは紛れていたカスタードクリームサンドのクッキーに目を輝かせていた。思わず笑いそうになるのを堪えてスカー王子を見る。


「ビオラ嬢も自信を無くしています。」

「っ!そうか…。」

「他の女性と会うなら事前でも事後でもきちんとビオラ嬢に報告してください。」

「わかりました。」


ライト王子はビオラが心配になって再びビオラを見ようとしたがその前にとんでもない爆弾発言が飛び出した。


「ビオラ嬢とはまだ結婚していないのですからまだ後継者を作ったりしてはいけませんよ。」

「後継者っ!?」


その声があまりに大きかった為話はビオラはびくっとしてライト王子を見た。誰が見ても顔が真っ赤だった。

その顔を隠すように手を顔に添えたが隠しきれる様子はないが再び小声で話し出した。


「そ、そんな事…していません。」

「でもビオラ嬢は破廉恥な事をされたと…」

「ビオラは慎ましい女性だから、手に口付けただけで破廉恥だと言うのさ。」


その話を聞いたスカー王子は哀れみの目でライト王子を見た後、ビオラを見た。


「ビオラ嬢…」

「はい、なんでしょうか?」

「ライト王子と口付けぐらいは慣れておいてくださいね。結婚式では口付けを皆の前で行うのですから。」

「えっ…」


みるみるビオラ嬢の顔が真っ赤になったかと思うと「破廉恥ですわ〜!」と部屋から飛び出して行ってしまった。

ライト王子が慌てて追いかける様子を見届けた後、スカー王子様は自分の席に戻り自分の紅茶を一口飲んだ。


「やれやれ…先が思いやられる。」


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