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10. 令嬢の休息

それからビオラの生活は忙しいものとなった。

まず、午前中は護身術のレッスンを行った。


「勿論私がビオラ様をお守りしますが、万が一に備えて護身術を身に着けましょう。逃げる為の体力もつけた方が良いですね。」


ということで朝はランニング、そして人の急所のお勉強、身の回りの物を咄嗟に武器や盾にできるようどう守るかなどの勉強をリュミエールにしてもらった。


「はぁー、はぁー…大変ですわ。」

「王子も私も強いので心配は無いと思うのですが、万が一のトラブルに対応できると更に心強いですからね。二人共敵の相手をして手が塞がっている時に逃げられないと困りますから。」

「そうですわね。守られているだけでは駄目ですもの。二人を危険に晒すことなく自分の身は自分で守って見せますわ。」


そして午後はドレスの打ち合わせや採寸、手持ちのドレスなどを見せて私の好みの把握をしてデザイン画を何枚か書いて下さったり、手持ちのドレスを着てみて実際どんな形が似合うのか熟考したりして時間が過ぎ去った。


「やはり、この形のドレスがビオラ様の魅力を引き出していますね。色はどうしましょう?」

「色は白では無いのですか?」

「白と言ってもこれだけ沢山の色があるんですよ。」

「うわぁ…凄い数ですわ…。」


まだまだやることが山積みである。

そして夕方になるとダンスのレッスンをした。


「今朝ランニングをしているのを見ましたので体力は大丈夫ですわね。あとはストレッチをしましょう。体をしなやかに動かす事が出来ますわ。」

「い、痛っ!痛いですわ!」

「痛くないように無理をせずゆっくり動かしてくださいませ。」

「こ、こうかしら?」

「そうです。それから少しずつ広げていきましょう。」


こうして大変だった1日が終わりヘトヘトになったビオラに王子がそっと歩み寄る。


「大変だったね。夕食にしようか。」

「分かりましたわ…。」


これを毎日毎日繰り返すのでビオラにどんどん疲労が溜まっていた。

そんなビオラに王子はそっと手を握った。


「明日は全てお休みして、ピクニックに行かないかい?」

「ピクニックですか?」

「あぁ、木々の葉が赤く色付いて綺麗な場所があるんだ。そこには温かいお湯の沸く場所もあって、そこのお湯を飲むと体の疲れがとれるという噂だよ。」

「へぇ!行きたいですわ!」

「それじゃあ楽しみにしているよ。」


そうしてピクニックに行くことになったのは、ライト王子とビオラ嬢だけだった。


「あれっ!?皆さんは来ないんですの??」

「デートに付いてくる空気の読めない人はいないさ。」

「ピクニックというから皆でわいわい楽しむものかと思いましたわ。」

「僕との時間も大切にしてほしいな、ビオラ嬢…。」


そう言いながら指を絡ませてくる王子にビオラはドキッとした。


「破廉恥…。」

「何か言ったかい?」

「き、今日は晴れて良かったですわね!」

「本当に素晴らしい天気だね。おや…あそこに湯気が見えないかい?」

「本当ですわ。噂のお湯かもしれませんわね!行きましょう!!」


走り出すビオラに慌てて王子が追いかけていくと、滝のように流れ落ちるお湯がそこにはあった。


「わぁ…迫力ありますわね。」

「コップを用意してきたから汲もうか。」


そうして滝にコップを差し出した王子だったが勢いが良すぎてコップから跳ね返り顔にお湯が勢い良く流れてきた。


「うぶぶぶっ!」

「大丈夫ですの!?」

「あっはっは!大丈夫さ。びっくりしたけどね。さ、どうぞ。」


濡れてしまった王子を心配しながらお湯を一口飲むと本当にただのお湯であった。


「お湯ですわ〜。この寒い所で温かいものを飲むと落ち着きますわね。」

「あはは、そのままの感想だね。」

「王子様…濡れてしまいましたけど大丈夫ですの?寒くありませんか?」

「大丈夫さっ!君が温めてくれたらね。」


そう言いながら濡れてしまったシャツを脱いで胸元を見せながらライト王子がふざけると、ビオラ嬢は頬を赤らめながらもそっとライト王子の胸元に触れた。


「び、ビオラ嬢…!?」

「お湯を持っていたから温かいと思うのですけれど…どうですか?」

「…ほっぺも当ててくれないかい?」

「こうですか?」


ライト王子はそのままビオラ嬢をぎゅっと抱き寄せた。


「恥ずかしいけど…何だか私幸せを感じますわ。」

「僕もとっても幸せだよ。」

「ふふっ、王子様の鼓動は大太鼓みたいな音ですわね。」

「ドキドキしてるのがバレて恥ずかしいな。」


ドンドコドンドコ鳴り響く自分の心臓に王子は耐えられなくなり、そっとビオラを引き離した。


「さぁ、ティーポットにもお湯を入れて向こうのベンチで食べようか。」

「そうですわね。」


こうして今度は慎重にティーポットにお湯を入れてベンチに向かった。


「まだ乾いていませんが寒くありませんか?」

「大丈夫さ、水も滴るいい男だろう?」

「えぇ、でも心配ですわ。このハンカチで拭いてくださいませ。」

「あぁ、ありがとう。」


そうして拭いた後、王子は自分の肌を触りながら呟いた。


「あれ…おかしいな。」

「どうしたんですの?」

「僕の肌がもちもちになっている気がするんだ。」

「わあ!本当にもちもちですわね!!このお湯でお風呂に入ったら全身綺麗になれそうですわ。」


王室のお風呂にこのお湯が使われるようになる日も近いかもしれない。

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