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三題噺もどき3

作者: 狐彪

三題噺もどき―よんひゃくろくじゅうに。

 


 ズキズキと響く痛みで目が覚めた。


「……」

 最近はそうそうなかったのだけど。

 頭痛で目が覚めるなんて何日ぶりだろう。

「……」

 こめかみのあたりを刺されているような痛みが脳内に響く。

 気分のいいモノではない、当然。

 まだ吐き気まできていないだけましではあるけど。

「……」

 治まりそうにない頭痛に辟易しながら、横を向いていた体を動かし、天井を眺める。

 外から、何かがぶつかる音が部屋の中に響いている。

 そういえば、今日は朝から雨が降ると言っていた。昨日の時点ですでに曇りではあったから、覚悟はしていたけど……また雨か。

「……」

 雨が降ること自体は正直いうと嫌いではないのだ。

 嫌いではなかったのだ。

 激しくなければ、雨音は心地のいいモノだし。その後の晴れは大抵いいモノが見られる。

 ただ年を重ねるにつれ、何が原因か分からなくなるほどに頭痛に苛まれるようになって。

 終いには、雨が降ると頭が痛くなるなんてことになってしまったものだから。

 雨が降ると、どうしても憂鬱になってしまうようになった。

「……」

 外はきっと、どんよりと暗く、重い雲が広がっているんだろう。

 彩の失せた灰色の町は、どれだけ寂しい想いを人々に想起させるんだろう。

 出来たばかりのかさぶたをひっかくような、チリチリとした痛みを覚えるのは、私だけではないと思いたい。

「……」

 ぼたぼたと壁を叩く雨粒は、いっそその音で目覚めた方がマシだったと思う程に部屋中を満たしている。

 時計の針の音も聞こえない。

 雨音と、痛みだけが響いている。

「……」

 音を聞く限り、何日か前に振った雨程ひどいものでもなさそうだが。

 ズキズキと響く痛みは、お構いなしに増していく。

 少しは治まってくれれば、動けるのになぁ。こうも酷いと、行動までに時間がいる。

「……」

 そして、痛みに耐えかねた体は。

 異常をきたす。

 まぁ、そもそも。

 痛みで起きた時点で、嫌な予感はしていたんだけど。

「……ぁ」

 やばいと思った矢先に。

 勢いよく体を起こしてしまい。

 それが最後の後押しになってしまったらしく。

 一際強く、ずきりと響いた瞬間に。


 ぼろ―


 と、何かがこぼれるみたいに。

 視界がぐにゃりと歪んで。

 ぽたぽたとシミをつくっていった。

「……」

 こぼれるたびに、痛みは増していくのに。

 それでも止まらずに、ぼろぼろと落ちていく。

 全く……昨日せっかく干したのに台無しだ。

「……」

 そんな思考もお構いなしに。

 視界はゆがんだまま、シミは広がり続けて、こぼれていく。

 こうなってしまうと止め方が分からない。

 何より、ここまでなるのが久しぶりすぎていけない。

 以前はまぁ、言う程でもないがそれなりの頻度であったので……分からずとも、動いたり、切り替えができたりしたんだけど。

 そもそも、思考とは関係なしにこの状態になっている時点で、もうどうにもならないのは確実なのか、これ。

「……」

 ずきずき。

 ぼろぼろ。

 ずきずき。

 ぼろぼろ。

「……」

 あぁもう。鬱陶しいったらありゃしない。

 そう思ったところで、とまりもしないし治まりもしない。

「……」

 とりあえずは、これ以上シミが広がるのは嫌なので。

 その辺にあったティッシュ箱を引き寄せ、数枚とる。

 本当はタオルとかが欲しいのだけど、そんなものここにはない。

 洗面所に行けばあるけど、動くと悪化しそうなのでこれ以上は動けない。

「……」

 これが治まるかは分からないが……。

 とりあえずは、それまでここで待つしかない。

 あーあ。

 もう。

 雨なんか大嫌いだ。





 お題:響く・ティッシュ・彩

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