第3話 出会い(お休みの日)
羅夢の配信が一日空いたことで、イレアムのことを調べる時間ができた。
イレアムは、最近配信アプリの中ではやりの投げ銭と呼ばれるものを採用しており、アプリ内ではポイントとして表示される。1ポイント=1円単位で換算され、配信者に配信内限定でギフトとして1ポイントから送ることができる。また投げるギフトによっては、エフェクトが発生し、より配信を盛り上げる一つのコンテンツとして用意されてるようだ。
そしてもう一つ、大事な要素として、配信者、リスナーにランクが存在する。
ランクは配信者、リスナー共々一緒であり、下から順にD、C、B、A、Sの五段階である。
このランクは、配信者は応援ポイントという数値によって、経験値みたいなものがもらえ、一日で最高+6、最低+1もらえる。
応援ポイントとは、応援のアクション(ギフト・コメントなど)と、そのアクションをおこなったリスナー数や、視聴時間・視聴人数からもらえる一つのスコアみたいなものである。
このスコアは、毎日ランキング化され、このランキングの順位によって経験値の増減を決める。
また、経験値も毎週更新され、+12でランクキープ、それ以下はランクダウン、+18でランクアップする。つまり、ただ配信しているだけでは、ランクアップどころかランクキープも難しい。
んーこの配信アプリは中々、厳しい世界のようだ。
というか、難しくて把握するの大変では?
などと、考えてるところで、もう一つのリスナー側のランクのシステム内容が目に留まる。
リスナー側にもランクみたいなものが用意されており、これは配信者一人一人で分けられており、要はその配信者をどれだけ応援しているか?である。このランクのあげ方は、配信内の上の部分に表記されており、視聴時間、コメント数、そして投げたギフトのポイント数で勝手に上がるらしい。
配信者よりは難しくないがうーん、何とも言えない。とりあえず今のところ、羅夢の配信しか行ったことないので、他の配信者を見てみるか。
キャベツの千切りとカロリーメイトを食べながら、ホーム画面の配信者リストを眺めていると、そこで目に入った、メイド服?を着た猫耳の生えたキャラクターの配信をタップしてみる。
「あ、初見さんのご・・・ごめん、読めないやw何て呼ぶのかな?とりあえず、初めまして!」
可愛らしい声と舌足らずな滑舌で、話しかけてくる。声作ってるのかな?
もしかして、シンプル読みにくいのかな。呼びやすいように、適当にじいさんとでも呼んでもらおう。
(どうも、ゴリラって呼ぶんですけど、じいさんって呼んでください。)
そうコメントした後、一番左端に表示されている名前の部分をタップして自己紹介文を見る。
蟒蛇 百々花
読めないと思ったら、これでうわばみと呼ぶのか。良い名前だなと感心していると
「じい?ならこれからジイジって呼ぶね!よろしくぅ!」
なんかあだ名みたいなの付いたな、ここだけだろうし、いいか。
(おけ、よろしくー。)
「今、ちょうどお酒切れたから、持ってきてもいいー?」
へえ、お酒飲んでるってことは成人済みか、でもだいぶ若そうだしチューハイ飲んでそう。
(おお、お酒飲むんですね。何飲んでるですか?)
「ん?今飲んでるのは業務用ウイスキーの炭酸割!」
めっちゃ飲めるタイプの人間かよ。声とのギャップよ。
(この人、家に業務用のウイスキーボトル6本と、自宅で作成できる炭酸水で、永遠に飲んでますよー。)
業務用ウイスキー、家に貯蔵してる人初めて聞いたが?世の中広すぎ。
「そうそう、飲めないと震えちゃうからさwww」
酒〇スやんけ!!!!!!!
いやあ、このキャラクターよく見たら右手に酒持ってるし。もしかして中身おっさんタイプか?
(いや、ただのア〇中で草)
とコメントしてみると、
「おい、ジイジ。もっぺん言ってみ?二度とここから出れなくしてやろうか?」
この子ちょっと面白いwwwww
などと、色々コメントしている間に時間が経ち、気付けば夜も深くなっていた。
「それじゃあ、明日も仕事あるからここまで!じゃあね!」
といって配信が終わる。そっと、フォローするボタンを押す。
今日は一旦イレアムのことを調べることもできたし、面白い配信者も見つけて楽しかったし。
今日も良い一日だった。と布団に潜り込むのだった。