第1話 出会い
「なんか墓建ったってwww」
女性の声で、一発目の言葉がこれだった。
え?どういうこと?墓建ったってなに?
配信者の名前のところには「羅夢」(らむ)という文字が書いてある。
というか、(Godrillaさんが入室しました。)以外、なにも映し出されない。この配信アプリでは入ったときに名前が表示され、入る前のコメントが映し出されないのか。
「あ、初めましてー、ご、ごっとりら?何て呼ぶんかな?」
多分、自分に聞かれたのだろう。確かにゴットリラとも呼べるな。
フリガナでも書いておこうかなと思いながら、
(初見です、ゴリラって呼びます。)
「おいいいい!!!!!!次、ゴリラ来たってええええええ!」
急に何事かと思ったら、よくよく見ると上のほうにアイコンが自分の含めて三つぐらいあるのが見える。
これもしかして、今いるリスナーのアイコンが表示されてる?
タップすると、名前が表示され、
狐
ぽんず
んー、どういうこと?
「ああ、今さっきなコンドルもおってな、今きつねやろ?んで次、何来るかなって話してたら、まさかのゴリラきたから、まじで動物しかこんってwww」
ああ、他にも動物が来てたからこのリアクションなのかと思ったら、
(もう動物園作ろうや。)
ぽんずというリスナーが一言。いや、きつねとコンドルとゴリラの動物園とかカオスやろ。
「確かにもう羅夢の動物園作ろうかなwww」
この一言である。ええんかそれで。
しかしコメントを送った後のレスポンスが速い。これは慣れてる人だと思いながら、コメントしていくうちに人物像が少しずつ出来上がっていく。
まず、とんでもなく漢字に弱い。
次に感覚でコメントを読んでいるのだろう。たまにひらがなすら読めないときがある。
そして、これは配信者のことではないが、きつねというリスナーはわからんがぽんずのコメントが面白い。
ぽんずのコメントと羅夢のレスポンスの速さで出来上がってるこのテンポは、まるで漫才を聞いてるかのような、居心地の良い配信になっていた。あくまで自分の感覚だけど。
しかし、話が進んでいくと同時に時間も過ぎていく。
そろそろ、午前4時、いい時間になってきたな。一発目に大当たり引いたといってもいいぐらい居心地良かったなぁ。
などと、終了の時間を名残惜しんでいると、ぽんずときつねから
(次来るときは、わいも動物になってくるでまた明日も配信してや、頼む。)
(明日もやってね!)
とコメントが飛んできた。どうやら、ぽんずときつねもこの時間をよく思ってくれたようだ。
「おけ、明日もこの時間ぐらいに出来ると思うから、どんなのか楽しみにしてるわ!」
そういって「この配信は終了しました。」という表示と共に何も聞こえなくなる。
この配信アプリにはアーカイブ(過去の配信)を見る機能がないのだろうか?と思い、配信者のアイコンをタップするとユーザー情報が表示されるだけで、残念ながら、アーカイブはないようだ。
見れないものはしょうがない。とりあえず、次の配信には最初から出れるようにフォローするボタンだけ忘れずにタップし、通知が来るようにしておこう。
寝る準備をしながら、少しお腹が空いたので、朝に切っておいたキャベツの千切りとカロリーメイトを食べた。
次の配信はどんなんになるかな?
珍しく、次の日の楽しみに期待を膨らませながら就寝した。