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リアナ②
その夢を見た日からしばらくして、私には婚約者ができた。
相手は公爵家の嫡男だった。父を見て育った私は貴族の男の人が苦手だった。嫌だとは言い出せず、ついに婚約者との対面の日が来た。
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彼を見て真っ先に目に映ったのは夢で見たものと同じ赤髪と緑色の目だった。だが助けてくれたのは所詮夢での出来事。どうせ私には興味なんてない。
そう思った時、彼から可愛いと言われたのだ。お世辞だとはわかっていても初めて言われた言葉だったから嬉しかった。そして彼の澄んだ緑色の目と私の目が合った時、私は恋に落ちた。
だからプロポーズはとても嬉しかった。この国では社交辞令に過ぎないこの言葉も私にとっては宝物のようなものだった。そして、彼から抱きしめられた時は本当にこのまま死んでしまいたいぐらいだった。
それなのに、思わず照れで最後は突き放してしまったのだ。
どうしよう。また嫌われてしまう。