表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

第6話

 それからというもの、夜には毎日ヨハン様と東屋(あずまや)で会っていた。一応、まだ王の婚約者候補だった為、あまり頻繁に会うのは(はばか)られたが、ヨハン様は会うたびに「問題ない」という。


 特殊な結界を張っているらしく、周りからは見えないらしい。それでも、気になって周りを気にしていると、ヨハン様がやたら髪の毛や頬を触ってきたり、抱きしめてきたりと大変だった。


 ある日、私の異変に気づいたルークが、こっそりと私の後をつけてきていたのだが、夜、出掛けることに()れてしまっていた私は、油断していたのか、そのことに全く気がつかなかった。


 東屋に入った私が見えなくなって焦ったのか、ルークが心配そうな声を出した。


「アメリア様?」


 私が東屋から出ると、ルークが安心した笑顔を浮かべる。


「どこかへ行っちゃったのかと思ったよ」


「散歩をしていたのよ。なんでもないわ」


 彼は、私の後ろを見ると青ざめていた。


「‥‥‥結界? 誰かと会っていたの?」


 そう言えば、ルークは魔法がほとんど使えないけれど、見分けることが出来るのよね。


 すると、東屋から出てきたもう1人の人物にルークは更に青ざめることになった。


「ヨハン様───」


 私がそう言うと、ルークは何故か片膝を地面に着けて頭を垂れた。


「陛下。陛下とは知らずに、お邪魔をして申し訳ありませんでした」


 陛下? 今、ルークは陛下と言ったのかしら?


「よい。夜中に騒がせてすまない」


「ですが、護衛もつけずに、この様なところに────」


「構わぬ。その為に、結界を三重に張っているのだ」


 そんなに張ってたのね。私には、よく分からなかったけれど。でも今、陛下って‥‥‥。


 ヨハン───いや、王の表情は硬く(おごそ)かで美しかった。さっきまでの、表情豊かな彼は、もうそこにはいない。


 途端に、頭痛が襲う。陛下、陛下、陛下───朧気(おぼろげ)ながら思い出したのは、陛下の冷たい無機質な表情などではなく、いつも笑っている顔だった。2人でいるときは、いつも柔らかく微笑んでくれた。優しい陛下。でも、「(あなど)られないように」って、いつも冷たい人の振りをしていたっけ。


 完璧では無いものの、記憶を取り戻した私は、陛下を愛していた事も同時に思い出した。私は、陛下に向かって微笑んだ。


「ヨハ‥‥‥いえ。陛下、少しですが思い出しましたわ。私、陛下の事を‥‥‥愛しておりました」


 すると、陛下は私の元へ駆け寄り私を抱きしめた。コツンと私の額に自分の額を当てると、私を見つめながら聞いてくる。


「愛していた? 今は違うのか?」


 私は頬が熱くなり、『顔が真っ赤になっているだろう』と思いながらも必死に答えた。


「いえ、今でも愛しております」


 イル王は私を抱きしめると、頬を寄せキスをした。


「ずっと私の(そば)にいておくれ。もう何処(どこ)にもいかないで欲しい」


「はい‥‥‥ずっと、お側におりますわ。これからも、ずっと」


 顔を真っ赤にした私がイル王を見つめると、イル王は(うなず)いた。よく見ればイル王の耳も赤くなっている。



 ‥‥‥すっかり、おいてけぼりになってしまったルークが、どんな表情をしていたかは、想像するに(かた)くない。




~お知らせ~

私事(わたくしごと)ではございますが『悪役令嬢の意外な能力~死にたくないのでチートスキル「識る力」をつかってすべての破滅フラグを回避させていただきます〜』が、コミックシーモア様にてコミカライズ連載中です。

小説とは少し違う展開になっている部分もあり、既に原作を知っている方も楽しめる内容になっております。

よろしければ、この機会に是非ご一読ください!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ