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2 思い当たる人物

 やがて警察から捜査員が何名か、そして家からも母と兄がやってきた。


「ああ一体何ってこと!」


 母はその場に崩れ落ちた。


「物取りの犯行、と見ていいですかな。ともかく指紋を採りましょう」


 私は仕事柄用意していた薄手の手袋をこの状況が判った時から着けていた。

 マリアも同様だ。

 母にもやってきてくれた時に渡していた。


「捜査員様」

「あ、自分はセラヴィト第一捜査員と申します。こっちは第二捜査員のデルトとコルセル」


 身分の高い第一の方が若い。

 私と同じか、少し下くらいだ。

 第二の方は彼より少し上に見える。


「お世話になります、セラヴィト様」

「いいえ。それにしても、このロープと貼り紙はきちんとしてますね」

「道を歩くお客様に何かあってはいけませんから」

「そうですね…… あ、だが……」


 セラヴィト捜査官は首を傾げる。


「何でしょうか」

「いえ、外側にガラスが飛び散っているということは、これは内側から壊した、ということです。ではどうやって入ったのでしょう?」

「はい、それで実は、母を呼んでいたのです」


 母は真っ青な顔でおずおずと私の前にやってきた。


「お母上? すると」

「はい。エリチェク男爵夫人、リンチェットと申します。実は、この店の鍵は娘と、最初の出資者である私が持っていたのですが、娘に言われて探してみたところ、それが無くなっているのです」


 そう。

 つまり、この店には裏口から鍵を開けて入ってきた、ということになる。


「ですので、指紋の採取を是非早くお願い致します」

「承知致しました。すると、貴女方には犯人の予想がついていると」

「一人だけなら。無論それ以外の可能性もあるのですが……」

「重要参考人ですね」


 はい、と私は頷いた。



 私達は二つの職場に連絡をし、家に戻る様に連絡をした。

 一つは父に、もう一つは義兄だ。

 そう、現在我が家は六人家族ということになっている。

 両親。

 独身の私。

 そして姉夫婦とその娘だ。

 うちには男子が生まれなかった。

 そこで同じくらいの家格の、両親の目にとまった没落しかかった家の三男を婿養子に迎えた。

 政略結婚と言えばそうなのだが。

 そもそも姉は恋愛結婚をしようにも相手がいなかった、ということもある。

 まあ私も無いのだが。

 馬車が四台、家の庭の車回しに停まる。

 エリチェク家は祖父の代から事業を大きくしていったことから、この国の家格の割には領都のすぐ近くに大きな家を持つことができている。

 その庭から、楽しそうな子供の声が聞こえている。

 姪のエリシャとその友達、そして乳母とメイド達が遊んでいるのだ。

 姉の姿はない。

 私と母がまず、家に入る。


「お帰りなさいませお嬢様、どうなさいましたか? ずいぶんとお早いお帰りで。それに、外の馬車は一体」


 執事が慌てて私と母を出迎える。

 彼には私達が一同に戻ることをあえて伝えていなかった。


「ただいまヨハン。理由はそのうち判るわ。それより、お姉様は何処?」

「ソフィヤ様ですか? 何でも今朝は気分が悪いからと、食事を運ばせて部屋に籠もりきりですが……」

「そう、それは良かった」

「良かったとは、……お嬢様、奥様?」

「私達はお姉様の元に行くから、後から来る人々をだんだんに通してあげてね」


 母は難しい顔をしていた。


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