転生者殺しの日常 -猫耳少女と自堕落生活しながら転生者を倒します-
初投稿です。
目にとまって頂けたなら、是非読んでください。
誰かから聞いた話をしよう。
人間は死ぬとその魂は天国へ行くか地獄に送られるかを決められる。
生きていた頃に積んだ善行や悪行、様々な条件を鑑みてそれらは決められるらしい。
天国へ行ければ、次の人生でも幸せが待っている。
だが・・・地獄へ送られれば、犯した罪を償うため永遠の苦しみが待っている。
しかしごく稀に、そのどちらでもないことがあるそうだ。
その一つである転生・・・最近ではその言葉がすっかり馴染みになりつつある。
それはアニメ・漫画・小説など、様々なモノに影響を与えている。
自分がいる世界とは別の世界に行くこと。
その世界で生前の姿のまま生きる、はたまた別人となりこれまでと違う人生を送る。
そして決まって違う世界には自分達の常識では考えられないモノが溢れている。
だが、これらは所詮フィクションだ。
現実に起こらないし起きない。
では、何故今こんなことを思っているのか?
それは・・・
『貴方は記念すべき1億人目の転生者に選ばれました~!』
目の前でこんなことを言う自称・女神様と出会ったからだ。
自分でこんなことを言うのも変だが、俺は転生者に選ばれるような覚えはない。
生まれてすぐに親に捨てられ、施設で育てられた。
高校まで施設で過ごしたが、その間にやらされた"仕事"のせいで俺は一般社会では生きられないようになっていた。
ようやくそのことに気付いて施設を飛び出した。
根なし草のまま居場所や仕事を転々とした・・・
だが、ある仕事でヘマをしてクビになり、帰宅する途中で車に轢かれそうな猫を助けた。
しかしそれが原因で俺は跳ねられた。
救急車に乗せられ病院に運ばれる最中、朦朧とする意識の中で助けた猫も一緒に跳ねられて死んでしまったことを朧気ながらに聞いた。
(最初で最後の善行は、無駄に終わったか)
そう思うと力が抜け、自分の命が消えていくのを感じながら目を閉じた・・・
(どうせ地獄に行くんだ、それまではゆっくり眠らせてくれ)
しかし、次に目を覚ました時に広がっていたのは何もない真っ白な空間だった。
『あら、もう目覚めたのね』
そこへ現れたのは・・・銀色の球体だった。
『初めまして~』
球体から声がして思わず球体を殴った。
『ちょ、ちょっと!?初対面の女の子をいきなり殴るって酷いじゃない!!』
いや、普通こんな状況で冷静でいろって言うのがそもそも無茶だろう。
そもそもここは何処なんだ?
『綺麗に無視してくれてるし~まあ良いわ』
そして球体から聞こえる声は説明を始めた・・・
『・・・って訳なの、分かった?』
正直理解には苦しむが、俺は死んで別の世界に転生するらしい。
その世界は崩壊を起こしており、何年も前から転生者を送り続け改善を試みているらしい。
俺の前の転生者達が開発したモノが数多くあり、現代と昔の文化がごちゃ混ぜになっている中々に混沌とした状態らしい。
『さらにさらに!』
と強調してきたのが、その世界には魔法があること。
魔法はその世界では当たり前で、転生者達も初期から使うことが出来るらしい。
他にもモンスターがいたり、様々な種族が存在したり・・・等々。
うるさいプレゼンを聞きながら思ったことがある。
転生者が行った所で改善するのか、この疑問を口にはしてないが目の前の球体は此方の心の中が見えているかの様にその説明もした。
転生させる時に神様から特別なエネルギーが与えられ、エネルギーはその世界で過ごすことで自動的に還元され世界崩壊を食い止めるらしい。
『貴方は記念すべき1億人目の転生者に選ばれました~!』
ちょうど俺で一億人、転生者がそれだけいれば事足りるだろうに。
『わかってないな~エネルギーは世界に還元されるけど、崩壊から食い止めるだけじゃなくて現状を維持するのにも必要なの。
だから~いくらあっても足りないの~』
なるほど、良く聞く設定だが神様は干渉出来ないってやつか。
『そうなのよね~さぁさぁ、転生するんだからこれまでの自分とおさらばするも良し!
今のままでチート無双するのも良し!
どうするどうする!?』
・・・じゃあ、転生するのはなしで。
『あっ、先に言っとくけど拒否権はないわよ?
それにもう私の方で転生特典とかその他諸々決めちゃったから。
それと貴方に付いていきたいって子がいたからその子と仲良くね~!
それと最後に一つ。
貴方はいつか"世界の真理"に辿り着く、そして・・・』
「・・・ひでぇ夢だ」
眠っていた青年は、起きてすぐそう口にする。
襖の戸に畳が敷かれた床と中央には囲炉裏。
古き良き日本家屋な一室、そこが青年の部屋だった。
スッ
「おはようございます、ご主人様」
襖が開き、その先には見る者を虜にする美貌の少女が正座をしていた。
長い銀色の髪と青紫の着物、相反するモノだが少女の美貌がそれを打ち消す。
そしてなによりも特徴的なのは・・・彼女の頭から出ている2つの耳と腰から出ている猫の尻尾だ。
青年は溜め息を吐きながら少女を見る。
「(はぁ・・・)ミコ、ご主人様ってのはやめろって何度言えば分かるんだ?
俺ももう言い飽きたんだが?
それと起こしに来るなって言ったよな?」
ミコと呼ばれた少女は青年をじっと見つめる。
「ミコのご主人は貴方だけです、ご主人様に対してご主人様以外の呼び名はありません。
私は貴方の言葉が聞けて嬉しく思います。
ご主人様は起こさないといつまでも寝ております、それに今日は来客が来ると昨日お伝えしておりましたので」
こいつはミコ、俺の最初で最後の善行・・・車に轢かれそうになっていた猫だ。
俺と同じで、死んだ際にあの神様に呼ばれ俺の側に行くことを望んだらしい。
そこで元の姿のままでは大変なので、猫耳美少女に変身!
「たくっ・・・分かってるよ、お前が起こしに来る前におきてたろが」
ミコ「そうでしたか・・・それと、本日の来客ですが」
「それも分かってる、分かってるから早く出てけ。
着替えるから」
ミコ「お手伝いします」
「良い、だから早く出てけ」
ミコを追い出して着替えた俺は部屋を出て、そのまま応接間に向かう。(ミコは無言でついてきてる)
(ガチャ)
「遅い!全く貴族たる我をいつまで待たせるのだ!」
応接間に入って早々、先にいた人物から文句を言われる。
「・・・ミコ」
ミコ「承知しました」
相手するのも馬鹿らしくなり、ミコに任せて応接間を出る。
「・・・腹減った、飯でも食うか」
応接間に残ったミコと貴族の男。
「おい貴様、貴族たる我に謝罪の言葉は!?」
ミコ「致しません、いえする必要がありません」
「なっ!?き、貴様!我を誰だと」
ミコ「ご主人様によって全てを明るみに出され、今は全てを失った貴族・・・そう記憶していますが?」
「ぐっ・・・!?」
ミコ「いえ、元貴族でしたね。
ご主人様に謝罪したいと仰ったので、ご主人様にわざわざお時間をとって頂いたのに・・・」
「う、うるさい!さっさとあの男を連れてこい!」
ミコ「申し訳ございません、ご主人様はこのあとも様々な方との商談と会議があります。
そうですね・・・次に予定が空くのは3カ月後ですね。
それで良ければお取りしますが?」
「ふ、ふざけるな!もういい、二度と来るか!!」
貴族の男を追い返したミコは溜め息を吐く。
(全く、アポ担当には説教をしなければ・・・ご主人様の貴重な時間を浪費させた罪は重い。
この世界に来て5年・・・神様からの指令をこなして、商会をここまで大きく出来たのは紛れもなくご主人様の技量。
本人はああでも、私を含めた周りはその能力やカリスマを慕っています。
中には、私と同じ恋愛感情を持つ者がいますが・・・
前の世界では、自らの幸せを感じれなかったご主人様・・・この世界ではそうはさせません。
私の命、全てをかけて・・・ご主人様を幸せにして差し上げます)
ヒラヒラ・・・パタン
「・・・次か」
『西の王国に、転生者を騙る偽物アリ』
「今度は西か」
ミコ「準備は出来ております」
「・・・行ってくる」
ミコ「いってらっしゃいませ、転生者殺し様」
もし『面白い!』『良かった』『こうした方が良い』などなどありましたら、教えて頂けると嬉しいです。