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イツクル  作者: カガワ
2/2

回収

過去三年分のデータからいうと、()()正午時点で投票数が30を超えた日は最終的な投票もまず間違いなく50を超える。20なら8割といったところ。10となるとぐっと下って半々か。

何がって、アスクルによって()()()()()()()()()ことがだ。


繰り返すことがわかっているならどうする?くじを買う、結果が()()()()()()()()わからないものはだめだ。その場で結果がわかる競馬などならと思い、その日の勝ち馬を覚えておいたが大抵は繰り返しが起きない徒労であった。まぁ、これは気長に続けるしかない。結果を知ってやる賭事で損するはずがないのだ。給料三年分もそのうち回収できるであろう。


しかし、繰り返しがなかなか起きない。


俺は精度を上げるために、更にデータを学んだ。

どうやら繰り返しが起きた日をみると、その前日の投票は80を超える高い数字であることが多い。高いあとに、著しく低い数字が来れば繰り返しが起きる可能性は高い。


俺は毎時間イツクルを、眺め、時間ごとの数字も記録し始めた。アスクルを見ることは日に1度、朝投票数を確認するだけだ。投票もイツクルを手に入れてからずっとしていない。


それを続けた。

「来るな、来るな、()()()()()()()()

そう願っても、明日はアスクルが連れてきた。


繰り返しがわかったなら何をしようか。普段なら入れないような店に行くのもいい。どうせ今日はなかったことになる。なんだってできる、どうせ今日はなくなるのだから。誰も俺を責められない、罰せられない!!何をしようか、何でもできる!


「くそ、バカどもめ、投票すんなよ!何で、明日を望むんだよ!バカめ、クソっ」

俺の期待に反して、アスクルは今日を殺し続けた。


電話がなった。

ちょうど正午、イツクルの数字をメモしている時だった。仕事も休憩時間だったので、そのまま電話に出た。

「お世話に()()()()()、私、明るい未来社の綿串でございます」

「あぁ、どうも…」

アスクルを販売してきた担当者だった。しかし、その時とは違い、ひどく暗い声であった。

「誠に残念ですが、伊藤さまは、アスクルの所有者にふさわしくない、と判断されました」

「え?」

「こちらとしても残念でなりません、すでにアスクルは回収致しましたので…。それでは失礼致します」

「ちょっと!何言っているんですか?!ねえ!!そんな勝手なことありますか?!」

「契約でそうなっておりますので。本当に残念です」

「知りませんよ、何が、俺の何が悪いんですか?!」

「えっ?」

心底驚いたと言う風に綿串は声を上げた。

「違いますよ、伊藤さまは何も悪くありません。ただ、伊藤さまの明るい未来に()()()()()()()()()()()というだけです」

「そんな!そんなこと、ありません!お願いします!」

「すでに決まったことですので、申し訳ござません」

電話を切ろうとしている気配を感じて俺はカッとなった。

「そんな、勝手すぎるじゃないか!イツクルを売っておいて!明るい未来?!イツクルはどう考えても、()()()()()()()道具だろう!!」

綿串は何も言わない。静かだ、静かすぎるぐらいに。俺の神経が高ぶっているせいだろうか、すぅっと、電話ごしに綿串の息を吸う音が聞こえた。

「イツクルなどという商品は()()()()()()()。そのようなものは明るい未来社には取り扱いがございません」

がちゃん、と、電話が切れた。番号を確認すると、非通知であった。


そして俺のもとには、イツクルと、給料三年分の借金だけが残った。

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