第八話 三匹の龍
「合体って、マジで?」
俺、龍海守はナーガズネストの司令室で二人の女の子と
作戦台を挟んで向き合っていた。
一人は赤髪ポニーテールの美少女、三十年前に行方不明になった
俺にとっては伯母にあたる赤春華。
もう一人は金髪碧眼でお団子頭が可愛い白人の美少女、なのだが
首から下は逞しく鍛えられた筋肉が美しいベアトリス・アイゼンバーグ。
俺とは幼馴染でこのナーガズネストの最高指揮官だ。
俺達三人は地球を守る龍神に選ばれ、龍神の化身である三体のロボット
を駆って戦う戦士だ。
「ええ、画像を出しますわ」
ベアトリス、あだ名はベア子が作戦台を操作すると画像が浮き上がる。
赤青黄の三頭の龍型のロボットが宙に浮かぶ。
三頭は一列に並ぶと、先頭の龍の尾を後ろの龍が噛み真ん中の龍の尾を
最後尾の龍が噛みついた。
「列車の連結みたいね、ここから人型になるのね」
春華が発した言葉通り、尻尾を噛んで一本の線となった龍達は一瞬で
巨大な人型のロボットへと姿を変えた。
黄色が真ん中なのは信号機みたいだなと思った。
「龍神様に物理法則だとか言うのも野暮か」
俺はツッコミを諦めた。
「ええ、この合体した姿をリュウグウオーと呼ぶそうです」
ベア子がリュウグウオーと言う名を告げた。
龍宮の王だからリュウグウオーなのだろうと俺は思った。
「この話をしたって事は、合体の練習をするって流れだな」
俺の言葉にベア子も春華おばさんも頷く。
「所で守? 私の事はおばさん呼びはなしね♪」
俺の心を読んだかのようにおばさんは微笑んだ。
「春姉さんとか、春姉で良いわ」
とのこと。
「わかった、春姉」
俺はおばさんの要求を受け入れた。
そんなやり取りの後、俺達リュウグウオーチームは訓練の為に
司令室内の壁に手を触れると壁が開きシューターの入り口が現れる。
シューターは各自の龍神が待機する格納庫へと繋がっており滑って
移動している状態が終わると、口を開けて待っていた龍神に飲み込まれる
ように搭乗した。
パイロットが乗り込めば出撃、俺とマーレナーガの格納庫はプール
みたいに海水が貯められていてゲートが開いて海中から発進する。
ベア子のゴルドナーガの発進は地下鉄が地上へと出る感じらしい。
春姉は戦闘機を飛ばすみたいに基地の格納庫から空へと飛ぶそうだ。
そうして俺達は基地を出て太平洋の沖合で合流、海の上を線路を
作りながら走るゴルドナーガの尻尾を海中から狙ってマーレナーガ
が噛みつく。
これがステップ1、次にゴルドナーガが雄叫びを上げてマーレナーガ
を空へと引き上げるようにグレンナーガの尻尾へと飛び上がりガブリと
グレンナーガの尻尾を噛みつくステップ2。
グレンナーガも痛みの叫びを上げながら高度を上げて空中で瞬時に
赤い頭と両腕に黄色のボディに青い下半身のロボットになる。
これがステップ3で最終過程。
グレンリュウグウオーの誕生であった。
「頭もハートも真っ赤に燃える、グレンリュウグウオー見参!」
春姉が名乗りを上げて歌舞伎のような両腕を上段に掲げた見得を切る。
合体してもコックピット一緒にならないが映像は映されるので俺は
アホの子だと春姉に呆れた。
「お次は私のゴルドリュウグウオーですわ!」
ベア子が叫ぶと同時に、瞬時に機体が分離して三匹に戻る。
今度はゴルドナーガがグレンナーガに噛まれグレンナーガが
マーレナーガに噛まれて変形する。
「天地を担う金剛力、ゴルドリュウグウオーですわ♪」
ベア子が力強さと可愛さを混ぜた名乗りを上げる。
ゴルドリュウグウオーは黄色の頭と腕赤い胴体と赤い腕の四本腕
に青い下半身とマッシヴな姿の機体だ。
そして再び分離し、今度は俺が乗るマーレナーガが先頭。
「ゴルド、噛み過ぎです! グレン、私はズルくありません!」
ゴルドナーガに噛まれたマーレナーガ、ゴルドナーガはグレンナーガ
に尻尾を噛まれている。
俺達人間にはよくわからないがこの龍神の姉弟の関係は面倒くさそうだ。
マーレナーガが長姉で次女がグレンナーガ、末子で長男がゴルドナーガ。
乗っている人間からすれば、仲良くしろと言いたい。
「守、グレンが私をずるいと苛めるのです慰めて下さい!」
「はいはい、良い子、良い子」
俺はでんでん太鼓を鳴らしてマーレナーガを慰める。
そんなこんなで最後はマーレナーガが頭でゴルドナーガが胴体で
グレンナーガが下半身のマーレリュウグウオー。
「世界を洗う大海嘯! マーレリュウグウオー、到着!}
俺も気合を入れて名乗る。
そしてパイロット三人で気持ちを表す名乗りを上げる。
「「龍が戦を覇して断つ! 覇龍戦断リュウグウオー!」」
龍が戦を覇して断つ、覇龍戦断。
漢文としてはでたらめだが、戦いに勝つという意気込みのフレーズだ。
この日は特に敵は現れず、ひたすら合体と変形の訓練に打ち込んだ。