第五話 防衛組織を作りますわっ! 後編
地球防衛組織を立ち上げます、とお父様にメールで連絡したら
好きにしなさいと返事をいただけました。
お父様も若き日にゴルちゃんのパイロットを目指していた時に
運用する組織が必要だと構想はされていたようです。
ですが申し訳ない事に、私がパイロットに選ばれてしまいました。
お父様は自分が選ばれなかった事に忸怩たる思いがおありだと思います。
それでも己の思いを吐露する事無く、私を支援して下さる。
娘としては、複雑な気分です。
ですがお父様の志は私が受け継ぎますわ、組織の名前はナーガズネスト。
ロボットであるゴルちゃん達は、ドラゴンではありますが東洋の
ドラゴンであるナーガの姿からその巣である組織と言う意味です。
シンボルマークは青黄赤と信号機の並びの三本の縦ラインと
シンプルにデザインしました、各種登録はお金の力で済ませましたわ♪
人員などは私個人が経営しております民間軍事会社と統合して運用する
ので此方は通達するのみ、後は優秀なわかっているスタッフにお任せです。
自警活動をする大富豪なんて、漫画のような人生を自分が送るとは正直
思ってもおりませんでした。
「さて、後は日本へ行くだけですわ♪」
本当ならここ、欧州某国にあるアイゼンバーグ城を本拠としたかったの
ですがね。
ゴルちゃん曰く、自分がマグマや土や鉱物からエネルギーを取るように
お姉さまであるマーレさんは海水と餌となる海の魚介類達が不可欠だそうです。
なので、マーレさんのパイロットである守君がいる日本の太平洋側の街で用地
を買い取ってそちらに急ピッチで基地の建設を進めておりますわ。
翌日、私は日本のとある地方の港町である波際市へと
到着いたしました。
「帰って来ましたわ、この街に♪」
オレンジと黄色のエプロンドレスを纏い、青空の下砂浜に立って
潮風を感じます。
白のワンピースに麦わら帽子のコーデで夏は過ごすのもありですわね♪
そのように懐かしの日本の空気を堪能しておりますと何やら道行く人が
ちらほらこちらをご覧になられるのは、外国人が珍しいからですわね♪
私、日本語も日本文化も通じておりますからご挨拶に伺ったら驚かれて
しまうかしら♪ 芸能事務所のスカウトはご遠慮させていただかないと♪
「お嬢、マーレの気配がするぞ? こっちへ近づいてくる!」
ゴルちゃんが私の心に語り掛けてきます、何という事でしょう♪
健康的な可愛げのある少年、守君がこちらに向かって来ましたわ♪
「……よし、呼ぶぞ! って、人がいる?」
守君がなにやら太鼓のような物を手に持って驚いてます。
「ま、守く~~ん♪」
私、理性を捨てて突貫いたしました♪
駆け引きのない素直な心でぶちかまし、愛しい守君を抱きしめます♪
「会いたかったですわ♪ あなたのベアトリス、ベア子ちゃんですわ~♪」
「ぐえっ! ……べ、ベア子?」
「貴方の幼馴染のベア子です♪ 結婚の約束もしました♪」
黙り込んでしまった守君、離れていた時間と成長してレディに
なった私を記憶から思い出すのに時間がかかるのは仕方ないですわね。
お互い背も伸びて顔も大人びて来ましたし、私は豊満なバストと
鍛えられた肉体を手に入れましたし。
「お嬢、空を見ろ! 奴らだ!」
私の足元の地中からゴルちゃんが警告します、空が突然紫色の雲に
覆われ雲の合間に巨大な黒い穴が開くと穴の中から無数の犬の頭が花束の
如く一つにまとまり下半身は蛸の足と言う化け物、腐海獣が姿を現しました。
「行きますわ、ゴルちゃん!」
私が叫ぶと大地が唸りドリルの牙と尻尾で地面を削りながら黄金の龍が
現れます。
「へ? 黄金の龍! 腐海獣も? 来てくれ!」
私が守君を離すと、意識を取り戻した彼が太鼓を鳴らしました。
すると、穏やかだった海が荒れ海の中から巨大な青い龍が飛び出して
守君を口の中へと吸い込んで行きました。
あれが話に聞いたマーレナーガ、こちらもゴルドナーガに乗り込みます。
青と金、二匹の龍が同時に二体の巨大なロボットへと変形し空へと上がります。
互いのコックピットのスクリーンに映像が出ました。
「事情はこっちの龍神様から聞いた、一緒に戦おう」
「ええ♪ 宜しくてよ♪」
鎧を纏った守君、凛々しいですわ♪
私が彼に見惚れる中、敵もこちらを認識して蛸の触手を無数に伸ばして
襲ってきました。
「タコは好物ですわ、ドリルバイト!」
「俺は頭を狙う、レインシュート!」
ゴルドナーガが龍頭の口を開きドリルの牙の群れで、迫りくる触手を
噛みちぎり、マーレナーガが犬の頭の群れに水の刃を雨と降らせて砕きます。
それはまさに雨だれ石を穿つ、水のビームでした。
ですが、敵は犬の頭が砕けても再生しマーレナーガに衝撃波で攻撃します。
こちらも、ドリルの牙で蛸足を処理しつつ援護に向かいます。
「おそらく犬の頭は切っても生える髪のような物、敵の核は体内にありですわ!」
ゴルドナーガに敵を熱源で見させれば、モニターに敵のコアらしき影が映りました。
マーレナーガも同様に探知をしたようで、互いに龍形態に変形します。
「行きますわ、ボルカニック・ダッシュ!」
「オーシャニック・スティンガー!」
マーレナーガは海流を纏い、こちらはドリルの牙を撃つ鳴らして炎を上げつつ
マグマを纏い燃える龍となります。
「「ウロボロス・アタック!」」
私と守君が同時に叫び敵へと突っ込みます。
そして、二匹の龍が交差しながら敵を穿いて進み輪を描くように敵を粉砕しました。
敵を撃破したことが原因か、空の穴も消え青空が戻りました。
二匹の龍は地上に降り立ち、私達を降ろします。
「とんだ再会劇でしたわ、ロマンのかけらもない!」
「えっと、ベア子ちゃん凄い成長したんだね」
私を見た守君が語り掛けてくれます。
「ええ、良く寝て良く食べて相撲の稽古も頑張りましたのよ♪」
「……そ、そうなんだ? じゃあ、またね」
「守君、お待ちになって♪」
私、素早く守君を抱きしめましたわ折角会えたのにこのままお別れなんて
勿体ないですもの♪
「お夕飯は私の家でいただきましょう、ちゃんこ鍋を振舞いますわ♪」
こうして、私は熊が獲物を取るように守君を確保しお家に連れて帰りました。
ナーガズネスト、旗揚げですわ♪




