第十八話 パワーアップへの道 守の場合
「敵の成長、段違いだな」
「こっちも、パワーアップしないと駄目ね」
「ゴルちゃん達と私達の両方がパワーアップしないといけませんわ」
前回、バハムートが逃げ帰ったと言う事でどうにか凌げた。
そして、ナーガズネストの司令室で俺達は顔を突き合わせて話し合う。
「けど、どうやってパワーアップすりゃ良いんだ?」
新技や新兵器の開発があるが、それよりも地の力を引き上げねばならない。
それがバハムートと戦った後で感じた俺達の想いだ。
「龍神様のトレーニングって、何か思いつくベア子ちゃん?」
「食事に当たるエネルギーを摂取していただくとか?」
「地球規模で大規模なお祭りは無理よね」
春姉とベア子のやり取りを聞いて俺は考える、エネルギーは必要だ。
「エネルギーは間違いなく必要になるよな」
今までは基地内でエネルギーを集めていたが、今後はもっと要る気がした。
「テレビやネットで、私達の戦う様子を流して応援してもらうのは?」
春姉が思いつく。
「確かに、それは補給方法としてありですわね」
ベア子がメモを取り検討案として丸を付ける。
「それに加えて、俺達が敵地へ行った時の補充方法も考えないとな」
地球に被害が出るが、戦うなら敵地へ遠征するよりホームの方が良い。
「地球から出過ぎると、私達の心から出るエネルギーだけだしね」
一人で宇宙で戦ってきた春姉が呟く。
「エネルギー問題だけで、予算の編成などが大変ですわ」
ベア子が額に手を当てる、街の被害の弁償やらもこちらから出しているからだ。
「取り敢えず、龍神様達とも話そう」
「そうね、当人達からも話を聞かないと」
「通常の敵にも備えませんとね」
結論として、乗り手三人だけでは解決法が思い浮かばない事が分かった。
「マーレ、パワーアップってどうすれば良い?」
俺は自室で寝転がりでんでん太鼓を額に当て、太平洋の底で魚を食っている
マーレナーガに聞いてみた。
「守、その事なのですが実は私達には力の行使に枷が嵌められております」
「え? あれでまだリミッターが掛かってるのかよ!」
「はい、枷を外せば守達や地球に大きな負担がかかるのです」
マーレナーガの言葉に彼女が俺達や地球の事を案じてくれた事を感じた。
「マーレ達が俺達の事を考えてくれたのはわかったけど、どうしよう?」
「私達も敵の脅威が強まって来た以上、枷を外す事に異論はありません」
「なら、俺達がそっちのリミッターを外しても平気なようになるしかないか」
「ええ、皆と修行を始める時を相談して下さい」
「わかった、じゃあ早速始めてくれ!」
マーレから話を聞いた俺は即座に頼んだ、早い方が良い。
「わかりました、ベア子さんや春華さんも同じのようです」
「気持ちは同じか、何時でもいいぜ!」
俺はマーレに告げる、すると俺の周りの景色が自室から山に囲まれた広大な
湖の上へと変わった。
全裸で湖面に浮いている俺に、でんでん太鼓からマーレが語り掛けてくる。
「守の修行は、この神の世界の湖の中で暮らす事です」
「もしかして、おとぎ話みたいに湖の魚とか食って龍になれって事?」
「流石は守です♪ この龍化湖であなた自身が龍になるのですよ♪」
「わかった、やって見せるぜ!」
こうして、俺の修行は始まった。
試しに湖の水を飲んでみる、その味は昆布とカツオの出汁に似た旨味だ。
「う、美味い! それに、一度飲んでみたからわかるがいくらでも飲める」
俺は一心不乱に水を飲んだ、飲んでも飲んでも止まらない。
いくらでも飲める、飲めば飲むほど体に力が湧いて来る。
飲むだけでなく皮膚からも湖の水が体に入ってくる。
俺は湖の中を泳ぎ回り、湖の中にいる魚や貝などの命と戦い喰らった。
「俺は龍になる、そして腐海獣やその親玉にも負けない位強くなる!」
そしてどれほどの時間が経ったのか?
湖の中で暮らす内に、段々と手足が伸び体に鱗が生えてと変化して来た。
湖の水を飲めば飲むほど、生き物を食えば食うほど肉体の変化は進み
気付けば俺は一人の人間から一頭の龍へと姿を変えていた。
「ああ、俺はついにマーレみたいな龍になったんだな」
と思った所で、青い湖から景色が変わり人間の姿に戻り基地の自室にいた。
「あれ? ここは俺の部屋だよな? 今までのは夢だったのか?」
修行とやら失敗したのだろうかと悩む俺の前に、ポンと白煙が出ると共に
小さい姿のマーレナーガが現れた。
「守、そんな事はありませんあなたは見事に成し遂げました♪」
「そ、そうなのかな? それにしては人間の姿なんだけど俺?」
マーレナーガに疑問を口にする。
「ええ、貴方が得た龍の力を私が分離して人間に戻しました♪」
さらりと凄い事を言うマーレナーガ。
「で、その俺から別れた龍はどこにいるの?」
自分の成果が気になったので聞いてみた。
「私のお腹の中で元気に過ごしています♪」
ベア子が聞いたら憤慨しそうな言い方をするマーレナーガ。
「ああ、何と言うか次の戦いの時に見せてもらうわ」
パワーアップの為の修行を終えた俺は、急に襲って来た眠気に負けて
眠りについた。




