第十話 クリスマス防衛戦
かくして、俺はベア子ことベアトリスと正式に交際を始めた。
「「おめでと~~~う♪」」
食堂にて基地の仲間達が全員で祝いの言葉をくれた。
「甥っ子にも弟にも先を越された~~~♪」
春姉が嬉しそうな顔で悔しさを叫ぶ。
「春華さんにも必ずいい出会いがありますわ♪」
ベア子が満面の笑顔で春華に語りかける。
「そうね、がんばるわ」
春姉が気合を入れる。
「私達の交際記念、と言うわけではありませんが福利厚生として
基地を挙げて盛大にクリスマスパーティーを開きますわ♪」
ベア子の宣言に基地の皆が盛り上がる。
「うおっしゃ~♪ 盛大に盛り上げるぜ♪」
「腐海の奴らも空気読んで出て来るな~♪」
お祭り気分になるスタッフ達。
「出てきたら私達が花火にして差し上げますわ~♪」
ベア子もテンションがマックスだ。
「俺も平和なクリスマスを守る為に頑張るよ」
楽しい仲間達との平和なひと時を過ごしたいのは俺も同じだった。
クリスマスパーティーというご褒美でナーガズネストの面々の士気
は高まっていた。
それがいけなかったのかはわからないがクルスマスイブ二日前。
ナーガズネストの司令室に緊張が走った。
「月面に腐海獣が出現ですって?」
モニターには通信衛星が撮影した黒いギリシャ兵の如き巨人型の
腐海獣の群れが地球防衛軍月面基地を守る白い人型ロボットの部隊
と交戦している様子が映し出されていた。
「こっちはパーティーが近いってのにオセロしてんじゃないわよ!」
白と黒からオセロを連想した春姉。
「腐海獣の奴ら、スパルタ兵気取りかよ」
「ええ、ならば史実通り敗北を与えて差し上げましょう」
俺の言葉にベア子が相槌を打つ。
「そうね、奴らに敗北をクリスマスプレゼントよ!」
春姉も猛った、やる気は十分だ。
かくして、俺達リュウグウオーチームは月面へと向かう事にした。
一仕事を終えてパーティーを楽しみたい、動機は不純だがチームの
心は一つになるなら充分だ。
グレンナーガを先頭に尻尾を噛んで連結した三匹の龍が宇宙へ向かって
飛んで行く。
「宇宙よ、私が帰って来た!」
春姉が叫びグレンリュウグウオーが宇宙空間で腕組み仁王立ちポーズ
を取る。
「水を得た魚みたいですわね」
ベア子が呟く。
「何か番長みてえ」
学ランが似合いそうな春姉だった。
「実際、番長だったのよ!」
春姉が叫びグレンリュウグウオーが月面に突っ込んだ。
「おい! 何処のスーパーロボットだ?」
「ヒュ~♪ あれは最近噂のリュウグウオーだぜ♪」
「ち! 美味しい所どりか!」
「敵は譲ってやる!」
俺達が来るまで腐海獣達を相手に奮闘していた、地球防衛軍の
月面でのエース部隊であるホワイトルークスの通信が伝わってくる。
エース部隊の名は伊達ではなく、彼らのお陰で敵の数は残り三十体までに
激減していた。
「兵隊さん達、カッコイ~♪ ありがとうございま~す♪」
「わかってるじゃねえかお嬢ちゃん♪」
「俺達からのスコアのプレゼントだ、がんばりな♪」
「援護が欲しけりゃ言ってくれ♪」
猫を被った春姉の美少女ボイスがあちらに届いたのかエース部隊は
くるッと掌を返した。
家のチームとどっこいだなこの部隊。
俺の心配をよそにバトンタッチとばかりにホワイトルークスの皆さんは
撤収し俺達と腐海獣の対決が始まった。
「まずはあたしから決めるわ!」
春姉がグレンリュウグウオーを跳躍させる、機体の両手甲から五爪を
だすと爪から炎を剣の如く噴き出す。
「ハイヤー! 双炎剣舞っ!」
スパルタ兵の真似か黒い槍を俺達に投げて来る腐海獣。
だが、その槍のシャワーを宙を舞いながら炎燃え上がる爪を振るい
霧散化させつつ十体の敵を切り裂き炎に包んで消し去った。
「お次は私ですわ♪」
ベア子が叫ぶと同時にリュウグウオーはゴルドリュウグウオーへと変形した。
月に空気はないはずだが、グレンリュウグウオーが踏んだ四股で月面に
地震が起きた。
「行きますわよ、これぞまさに月面落としっ!」
ゴルドリュウグウオーが大地に手を突き刺し月面の岩盤をちゃぶ台の如く
ひっくり返して追撃してくる敵を押しつぶした。
残りの敵は十体。
「整地はただで引き受けますわ♪」
最後は俺の番、マーレリュウグウオーに変形。
「最後は俺だ、海の地獄を味わえ!」
月に海はない、だが俺とマーレリュウグウオーなら海を出せる。
空に浮かびあがり両腕を天に掲げてゲートを開く。
マーレリュウグウオーの両手に水の球が生まれる。
「綺麗に浄化してやるぜ、オーシャニックトルネードッ!」
ダンクシュートの如く敵の群れに水の球を落とせば球は渦を巻いた
海流となり黒いスパルタ兵型の腐海獣達を押し潰した。
「お仕事終了~♪ 帰ってクリスマスパーティーよ♪」
春姉が叫ぶ。
「盛り上がるぜ♪」
俺もテンションが上がる、何せ人生初の彼女有りのクリスマスだ。
「ええ、最大限に盛り上げますわ♪」
ベア子も高らかに宣言する。
こうして俺達は、地球へと帰り基地の皆と盛大な
クリスマスパーティーを開いた。
会場は基地の地下のホール、俺達リュウグウオーチーム
だけでなく傭兵部門や整備部に事務方に広報部にと全スタッフ
百名が集まっての宴会だ。
簡素であるがステージも作られてスタッフ有志で結成されたバンドや
ユニットが演奏や歌の疲労を行ったりする余興が始まる。
「守、行くわよ♪」
「わかったよ、春姉!」
俺と春姉は家に伝わる組手のように相手と向き合い突きや蹴りを
打ったり避けたりする拳法の演武を見せた。
「守君、私がクリスマスプレゼントですわ♪」
「えっと、なら俺もプレゼントは俺で!」
余興の合間に行われたプレゼント大会で俺とベア子は
互いに自分を相手にプレゼントと思い切りバカップルな有様を披露した。
最高のクリスマスだぜ!




