引き渡し直後から首を捻る部分はありました
冷静に状況を振り返る為と記録の為と……と、完全に自分の為に書いているエッセイですが、小説サイトに載せていれば通りすがりに読んでいる方もいるようで――
まあ、それがどんな方かは分かりませんが、前回の内容を読んだら「悪徳っていうからどんな酷い施工をされたのかと思ったら、この人また随分細かい文句言ってるなー。完全に言い掛かりだろ、これ?」
……なんて感想を持たれているかも知れません。
今の精神状態に上からのありがたいご意見は不要なので感想欄を開ける予定はないですが、書いてみて、私自身「ここだけ切り取ったら完全に悪質クレーマーだわ」って思いますよ。
しかし、こちらもそんな疑心暗鬼な極限状態に追い込まれるには経緯があるんです。
イントロは、工事完了の鍵の引き渡しの日から始まっていました。
リフォームとハウスクリーニングが全て完了して鍵の引き渡しに設定されたのは6月21日の日曜の午後三時でした。
――リフォーム後の部屋は壁紙全て床全てを変えてもらったわけで、工事前から比べたら雰囲気はすっかり変わって綺麗な部屋になっていましたよ。
……まあ、一見。
「問題ないですか?」と鍵を持ってきた現場の責任者に訊かれたのでその場でチェックして、トイレ等の鍵が甘くて、中途半端な状態でドアを閉めると中に人がいなくても鍵が掛かってしまう、とか。ちょっとフローリングタイルが浮いている箇所なんかは、鍵を一本だけ預けて荷物を入れる前に修正してもらう事になったんです。
――で、この日の時点でキッチンの掃除が甘いなあ……とは気付いていました。
浴室とキッチンのコンロやレンジフードについては「汚れが酷くてここまでしか……」と完全に綺麗になっていない事は断りを入れられていたので、こちらとしても「元が汚かったから仕方ないか」とその点を争う気は――この時はなかったんですが、
シンク下の収納スペースを開けたら、観音開きの扉の蝶番の全部に黒い埃なのかカビなのか……みたいな汚れが拭いた形跡なく残っているし、引き出しを開けてみたら手前しか拭いてないし……というような何だかちょっと雑だなあ……と思う点がちょこちょことありまして……
でもね、それだってこのときは、現場責任者に報告はしたけどやり直せとは言わなかったんです。
「このくらいなら私の方で掃除しますけど、結構やり残してますね?」だけで済ませたんですよ。
それから――荷物を運び込み、まずはキッチンの収納を……と物をしまおうとしたのは引っ越し後です。最後の調整も済んだ後でした。
「……あれ? 収納スペースの中、一見色ムラはないけど、薄汚れてない?」
――で、一応キッチン掃除用のウエットシートで拭いてみたんです。
結果は、一拭きで白いシートが薄茶色に……
結局「入居前の丸ごと的なハウスクリーニングってこういうところも綺麗にしてくれると思っていたのになー……」と思いながら、三時間以上かけて、キッチンの上下の収納スペースと備え付けの食器棚、こちらはガラス戸も含めて――を自分で磨き上げました。
……でもね、この時点でもまだ苦情を言う気はなかったんですよ。