悪徳……ではなく、下手なだけ?
そもそも、エッセイのタイトルにもあるとおり、今回散々な仕事をしてくれたリフォーム業者を使ったのは、物件を購入する仲介の不動産屋の営業からの紹介で、です。
うちの夫婦は基本休みが合わないので、内覧に行った後の手続きは旦那に一任していました。
――で、私のところには最初から「不動産屋の関連会社に頼むと高いから、別の業者紹介してくれるんだって」と言う、決定事項としての報告しかなかったんですが……
兄曰く「問い合わせしたら不動産屋の方針としては関連会社でのリフォームが基本なんだって。そっちの見積もりはもらっている?」と……
……いや。一連の流れで関連会社なんて影も形も出て来てないんですが?
それに、今思い出しましたけど、内覧に行った日の帰り、旦那は仕事前に時間を作って朝イチの内覧で、そのまま最初の手続きだけ不動産屋の店舗に行ってする流れになり――仕事に間に合わないから旦那はそこから出勤に。私はH氏に車で当時のアパートまで送ってもらいましたけど……
まだ世間話程度でしたけど、アナタあの時から関連会社じゃない業者連れてくる気だったよね?
――しかし、残念ながら16日の会合でそれを問うたところ、旦那には関連会社の見積もりも見せているそうで……
……まあ、ここは夫婦間の連絡が足りなかったと認めましょう。
でもさあ! 数十万円の違いでこれから十年、二十年住む家に手抜きのリフォームをされるなら、高くてもアフターフォローのあるであろう関連会社にお願いしましたよ?
その点は? 安くなるカラクリは何なの?
……で、これもまた、H氏が調子良く話すには「決して安かろう悪かろうみたいな業者を紹介したつもりはない」「値段の違いは中間マージンの差であって、関連会社に頼んでも実際の施工は下請けがやるし、当たり外れはある」
…………
……ふーん。
――まあ、実は私は就職氷河期以降の不景気にガッツリ巻き込まれた世代で、色んな会社を転々として事務職をやって来たので、普通にひとつの会社に勤めて来た人よりは、多くの業界の内情を実際に見てきました。
住宅ではないけど、工事関係の会社で、やっぱり実際の施工は一次請、二次請、三次請……みたいな世界も少し覗いた経験があります。
私が働いたところは、とにかく一次請の会社がダメダメで、むしろ二次請はちゃんと仕事したいのに、指示がおかしな事になっているし……みたいな感じでした。
……馴染みの派遣会社の営業に頼み込まれて行った会社で大手企業の関連会社だったんですけど、あまりの酷さにビックリでしたよね。そりゃ、経験の浅い若い子を事務で派遣しても精神を病んで来なくなるわ……って納得の。
……少し話は逸れましたけど、まあ要は「悪意はなかった」「施工箇所にお客様との認識のズレはあったかもしれないが決して手抜きやおかしな工事はしていない」って、事ですよ。
ふーん……
じゃあ、見てもらおうじゃないですか。
部屋の壁がクロスはそうでもなかったけど、剥がしてみたら内壁にカビが酷かったから、その部分を大きめに切り取り壁を二重にすると言っていた部屋。
説明は受けたけど、本当にそのとおり施工したんでしょうね? 説明だけしてカビだらけの下地にそのままクロス貼ったりしてません? 床は? 床もカビ対策してくれたんですよね? 今回、個室の床は絨毯を――木のフローリングじゃなく、木目調のフローリングタイルにしてもらいましたけど、貼られたタイルとタイルの間の内側から黒い染みが出てる場所が散見されるんですが?
「これはグレーの接着剤がはみ出たんだと……床は施工途中の写真持って来ました。こんなふうに床板も張り替えてカビは問題ないように……」
……と、現場責任者が説明してきました。
……なるほど、確かにこれならカビは大丈夫そうですけど。
では、和室以外の三部屋全て、同じ明るい色の木目調フローリングタイルにしてもらったのに、この部屋だけがよく見たら染みがあちこちにあってなんか汚らしいのは、この部屋の床を貼った担当の下請けの人間が下手だっただけって事ですか?
「……そうですね」