お前はこのパーティには必要ない!追放だ!!
魔王を斃す道行は常に苦労が付きまとう。
故に、パーティの行軍についていけない仲間には脱落してもらう他ないのだ。
そして俺は今日、パーティの一員として苦渋の決断をしなければならなかった。
「お前はこれまで仲間としてよくやってくれたと思う……だが、残念だがここで終わりだ」
目の前に立つ仲間に、つとめて冷静に事実を伝えていく。
「単騎でもドラゴンを撃破出来る俺や、優秀な回復能力を持つ僧侶、基本性能においては誰にも引けを取らない戦士、知識や魔法に長けた魔導士……皆素晴らしい力の持ち主だ。それに比べお前の能力は、あー、少し弱すぎる気がしていてな」
仲間はそれを黙って聞いている。
「だから悪いが、お前は今日でパーティを追放だ。調教師」
調教師は黙って目を瞑った。
可哀想だが仕方がない。だって本当に役に立たないんだもん。
そんな俺と調教師の様子を見ている仲間達が、小さな声で何かをひそひそと囁き合っているーー
その声は俺にはギリギリ届かないくらい小さい。
・・・
「勇者はアレ一人で何やってんの。空気に向かって喋ってるけど」
「あーまた仲間を追放してるんだろうな」
「仲間? 私達のことですか?」
皆にも仲間を追放したことはわかるらしい。
この後俺は責められるだろうか。辛い役を負ってしまったが、仕方ない、これも魔王を倒すための使命の一つだ……
僧侶が何か言っている。俺にはギリギリ聞こえない。
「違うよ魔導士。追放されてるのは調教師だから」
「テイマー? どなたですかそれは?」
「テイマーは勇者の心のお友達だよ。ねえ戦士」
「ああ。正確には心のお友達4くらいだな」
「お友達がたくさんいるんですねえ(憐憫)」
魔導士がなんだかこちらを見ている気がする。憐憫の視線だ。きっとこれから追放されるテイマーに対してのものだろう……
戦士が何かを言っている。俺にはギリギリ聞こえない。
「少し前にキメた時になんかハマったみたいでな。よく追放ごっこをやってる。追放されるのはだいたいいつも最初から居ないメンバーだ」
「まあ……(かわいそうなものをみる目)」
「ちなみにテイマーが追放されるのはこれで二十二回目だ」
「まあ……そうなんですね……(かわいそうなものを見る目)」
「その後テイマーからザマァもされる」
「まあ(笑)そうなんですね(笑)」
そんなに見るなよ照れるじゃないか。
・・・
仲間との悲しい別れを経て、俺達は次の街へと進むのであった。
「次の街は……看板が擦れて読めませんね」
【絶対に○○幸せにな○○街】
「絶対に幸せになる街? なんか怪しいけどいいですねえ!」
「何言ってるんだ魔導士? 文字なんて読めないじゃないか」
「ていうか看板なくない? デカい人間の目玉はあるけど」
「その前に街に鳥人間が彷徨いてるんだがここは魔物の街じゃないのか」
僧侶も戦士も妙なことを言うな。ちゃんと看板はあるじゃないか。何がなんだかわからんが。
とりあえず俺達は街に入ろうとした。その時、
「あーそこの勇者様ご一行!」
側にあった小さな建物から人が走って出て来たのだ。
役人らしい格好をしている。
「あーっと、街に入る前に武器を置いていってもらえますか! 危険なので」
「武器?」
戦士が眉を顰める。
「俺達は一応戦士だったり勇者だったりするわけだが、武器がなくて大丈夫なのか?」
「ここは『絶対に○○幸せにな○○○街』。何の問題もありませんよ」
何故か役人の言葉が街の名前だけ聞き取れなかった。
昨日仲間を追放したストレスからアリファナやらなんやらを適当に呑みまくったのが良くなかったのだろうか?
まあ保険要員(パーティ全滅を避けるため常に一人だけクスリを摂取しない)の魔導士が多分聞いてるからヨシ。
「武器を渡さないと入れないなら仕方ないな」
「そうだな。俺も剣と注射器を渡すか」
「僧侶の私の武器って何……?」
話しつつ、俺は腰から剣を抜いた。剣といっても伝説も何もないただの鉄の塊だ。
旅の道中で手に馴染んで来たのか、少しいつもより軽い気がする。不思議に思いながらも自分の剣を役人に渡そうとして、
「勇者さん、それはご自分のブーツです」
とにかく俺達は街に入ることにする。




