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わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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馬鹿な冒険者

 真剣な表情で、ディードが取り出した器の蓋を取った。

 中に入っているポーションの色は見えない。

 だが恐らくは、人間の体力を回復する赤のポーションだろう。



 ポーションの摂取方法は、二種類ある。

 最もポピュラーなのが経口摂取であり、二つ目に取られるのが塗布摂取だ。

 基本的には口にポーションを入れ、嚥下させる方が効果が高いとされている。

 だがもし使用する人間が意識を失っていたり、経口で摂取することが不可能な場合、ポーションを患部に振りかけて使うことができる。



 今ディードがしようとしているのは後者、つまりは塗布摂取だ。

 彼はまず。仲間の女性の服を脱がせた。

 そしてポーションを、自分の手に振りかける。

 次に手を女の腹部へと当て、直接傷の患部へと塗り始めた。



 使っている最中も、特に視覚的なインパクトはなかった。

 使うと同時に光り出したり、何か魔法的な処理がされるということもない。



 だがポーション全てを塗りきってからしばらくすると、明らかな変化が起こり始めた。 

 膿と血が混じり、凹んで土気色になっていた腹部の様子が変わり始めたのだ。

 オーガの攻撃にやられた傷が、みるみるうちに塞がっていき、しばらくすると肌の色もしっかりと赤みが差してくるようになる。



 傷が治っても即座に意識が回復したりはしないようで、女性冒険者が目を覚ましたりはしなかった。

 だが心臓も動いているようだし、死んではいないようだった。



 とりあえず、こうして実際にポーションの効果を見ることはできた。

 それほど金に困っていない現状、いくら怪我をする危険が少ないとはいえ、備えは必要なように思える。

 ポーションにも等級、というか効きの善し悪しもあるらしい。



 なるたけ高い物を、できるだけ大量に買っておこう。

 ディルは今日探索を終えてから、ポーションを購入しようと決める。

 イナリの能力の高さと自分のスキルの有用さ、それを過信していたらしい。


 もう既に何度も間違いに気付いてはいたが、ここにきてもまだ自分がどこか楽観的なままでいることに気付いた。



 確かに今、自分達はよほどのことがない限り怪我をすることはない。

 だがもし、何かがあれば。

 例えばイナリが察知できないような罠があれば。

 自分達では避けられないような位置に、到底相手ができないような魔物の群れがいれば。


 もしそうなれば、今この場で倒れることになったのは、自分達だったのかもしれない。

 そう考えて、ディルは背筋に寒気を感じた。



 彼はとりあえず今日の探索を終えようと決めた。

 そして、とりあえず一安心したらしいディードへ近づいていく。



「ディードさんは、どうしますかな? 意識のない一人を抱えていくとなると、相当厳しそうですが」

「そうだな……仕方ないが、なんとか二人で水晶まで行くさ」



 彼の表情は、ひどく苦々しげだった。

 自身が、何事もなく転移水晶へとたどり着くのは難しいと思っているのだろう。


 だが倒れた仲間を置いていこうとはせず、ディードはあくまでも意識のない仲間を背負っていくようだった。

 その態度は、仲間さえも容易く切り捨てる冒険者という職業において、ひどく得難いものだ。



 彼らがそのまま死んでいくのは、ひどく寝覚めが悪い。

 仲間を見捨てられないようなお人好しがいるのなら、そんな人間を見捨ててしまわない、バカな冒険者がいてもいいのではないだろうか。



 ディルは自分の思いを、イナリ達へと伝えた。

 二人は世迷い言をほざきはじめた年寄りに眉をしかめたが、結果として彼の提案を受け入れた。



 バカなことをしていると自覚をしながらも、話し合いを終えたディルはディードへと近づいていった。




「わしらと一緒に来たらどうじゃね? 転移水晶まで送るよ」

「………すまん、恩に着る。謝礼は今は無理だが、地上まで出て……」

「ああ、大丈夫じゃ。そんなことは、無事に皆でサガン迷宮を出れてからでいいから」




 ディルはしきりに頭を下げるディード達を連れて、来た道を戻っていく。

 こんな探索が、たまにはあってもいいだろう。

 迷宮探索は進みはしなかったが、彼の表情は、ひどく爽やかだった。

読んでくださりありがとうございます!



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― 新着の感想 ―
[気になる点] いや、膿むの早いなおい! じゃなくて膿は出てないと思います。泥の間違いですかね?
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