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わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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84/228

ポーション


 迷宮での冒険を生業とする者達には、幾つかの不文律のようなものがある。

 例えば、魔物を倒して得た素材は、討伐した者に所有権が渡るといった暗黙のルールが存在している。


 その中で最も有名なものに、冒険は自己責任というものがある。

 迷宮は一つ間違えれば命がなくなるような、危険極まりない場所だ。

 罠は様々なところに仕掛けられているし、一階層移動すれば出てくる魔物は変わる。


 命の価値が軽い迷宮において、全ての責任はその冒険者自身に帰結する。

 もし死んだとしても、それは冒険者自身の危機管理能力がなかっただけ。

 死ぬそいつが悪いのだ、と基本的に人を助ける冒険者は存在しない。

 ごく僅かな、奇特な例を除けば。





「先に行く、ジジイはゆっくりでいい!」



 イナリはそう言い残すと、ディルを抜き、その前にいたシアを抜いて、ぐんぐんと声のする方へと近づいていった。

 その速度は、今までディルが見たどんな走行よりも早く見える。


 もしかするとあれがスキルを使用した、彼女の全力疾走なのかもしれない。

 距離を引き離されるイナリの背中を、ディルはじっと見つめる。



 だが、あの声を聞いたまま止まっていることは、ディルにはできなかった。

 彼はスキル見切りを使用しながら、前へ前へと進んでいく。

 必死に走り出したシアを抜いてからしばらく経つと、ようやくイナリ達の姿が見えてくる。


 そこには既に動きの鈍くなっているオーガ達と、声を発したであろう人間達の姿があった。 一人の男と、二人の女は、満身創痍であるように見受けられる。


 男の方は劣勢だったせいか、既に右腕があらぬ方向へと曲がってしまっている。

 女のうちの片方は地面に倒れており、もう一人の方は比較的元気なように見えた。



 イナリはなんでもなさそうな顔をしながら、オーガの動きが鈍くなるのを待ってから、着実にトドメをさしていく。

 ディルがオーガ達の元へとたどり着いた時には、既に戦闘は終わりかけていた。

 彼にできたのは死に体のオーガにトドメをさすことくらいなものだった。



「遅かったな」

「いや、わし、これでも全力…………」



 迷宮に入ってからで考えると、今が一番疲労している。

 見切りを連続で使用すると、そのしわ寄せがあとになってからやってくる。


 ディルは既にグロッキー気味ではあったが、向き直り怪我をしている男達の方へと歩き出す。

 うめき声を上げている男の目は、少し血走っている。

 自分達がやられたことに、思ったところがあるのかもしれない。



「大丈夫かの?」

「…………ああ、助かった。オーガの魔石はあんた達のもんだ。俺たちに分け前はいらない」



 元々が何かを期待して助けたわけでもない。

 ディルは彼の言葉に頷いて、了承の意を示してやる。

 ディードと名乗った男は、ディルに感謝の意を示すと、急いで倒れ込んだ女の方へと歩いていった。


 何をするのかと思って見ていると、彼は一つの器を取り出した。

 チャプチャプという音から察するに、中には液体が入っている。 


 もしかすると、あれがポーションなのかもしれない。

 実際に服用をしているのを見るのは初めてだ。

 報酬はもらったが、これくらいは見ていても構わないだろう。

 ディルは男が女の口へとポーションを運んでいる様子を、真剣に観察し始めた……。

読んでくださりありがとうございます!


【神虎からのお願い】


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お手数ではございますが、よろしくお願いします!

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