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わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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オーガ


 第五階層は、今まで続いてきた連なった洞窟のような場所とは、かなり様相が違っていた。

 転移水晶を使って転移したディルが最初に感じたのは、鼻をつく青臭い香りだった。

 彼が目を開くと、そこには草原と木々が広がっているのが見える。


 草っ原よりも左側に、木が茂り樹林を形成している。

 天井は少なくとも見えないほどに高く、迷宮ではなく外に転移してしまったのではないかと思うほどに広い。



「ご飯を食うにはちょうど良さそうな場所だな……」

「オーガに見つかると厄介なので、それはよくないと思います」



 ぼうっと草原を見つめているディルの横で、二人が何やら会話をしている。

 だがディルは迷宮というものの大きさを改めて見た気がして、面食らっていたために、あまり話の内容には集中できなかった。


 こんな風に外を再現できるなんて、昔の技術は凄かったんじゃのう。


 これほどの技術を持った国々が、どうして滅びてしまったのだろう。

 もしかしたら強すぎる武器が、全員を皆殺しにしてしまったのかもしれない。


「おい、行くぞ。この分なら、ここから先は楽ができそうだからな」


 イナリが先に進み始めたので、ディルは考えるのを中断して前に進むことにした。





 第五階層は外周を木々が覆い、中に原っぱと林立する木達が混在していた。

 今までのように幾つもの分かれ道があるわけではないが、木が生やす葉や、木々が立ち並んでいる間隔がかなり少ないため、視界はそれほど良くはない。

 オーガは身長が二メートルを超える魔物であるが、木の長さのせいかオーガの姿を確認することは、まだできないでいた。



「少なくとも第五階層と第六階層なら、私だけでなんとかなる」

「第三階層の時は助かりました」



 出てくる魔物がリザードマンだけだったときは、イナリが毒を撒くのを見ながら、ディル達はただ休んでは歩くだけでよかった。 



 オーガは人間よりはるかに高い身体能力を持つ、そこそこに危険な魔物であるが、イナリがいるからかシアの顔色はそれほどひどくない。

 第二第三、第四階層で一緒に行動をしてきたことで、最低限の信頼は得られたようだった。




「向こうに一体いる。どうする、一度戦ってみるか」

「そうしようか」



 ディルにとっては休むことも重要だが、戦闘をあまり人任せにしすぎるのもよくない。

 一階層に数度程度は、しっかりと戦い、魔物の力量を知っておく必要がある。


 嘗めてかかって死んだり、力量が足りていないことに気付かなかったりしたら元も子もないのだから。



 ディルが先頭、イナリが中衛、シアが後衛となる一列縦隊を組みながら、前を進む。


 木々の隙間から覗くオーガは、話に聞いていた通りの風体をしていた。

 言ってしまえば身体が赤く、身長の大きなゴブリンといった感じだ。

 手には大きな棍棒を持っており、あの武器を槍のような中距離武器として使うらしい。


 唇が裂けてしまいそうな鋭利な犬歯によるかみつきと棍棒が主な攻撃手段で、魔法を使ったりすることはない。



 ディルは見切りを使用しながら、音もなくオーガの方へと近づいていく。

 彼はそのまま見切りを重ねがけして、身体の動きを最適な状態で維持しながら速度を上げていく。


 ある程度は本気を出そう。

 そう考えると、気付けば全力疾走をしている自分に気付いた。

 オーガがディルに気付いた時には、既にその距離は棍棒ではなく剣の間合いにまで近づいている。


「ふっ!」


 ディルの黄泉還りが、オーガの腱を深く切り裂く。

 そのまま足で自重を支えきれなくなったオーガの身体をひらりと避ける。

 そして地面に倒れたオーガの頭部に剣を突き刺した。

 痙攣をして、すぐにオーガは動かなくなる。



 見切りの連続使用と、全力での動き。

 言ってしまえばディルの全力は、第五階層くらいならばまだまだ通用するようだった。

 相手の行動を見切る必要も無く一方的に攻撃を入れられたことから考えると、力をセーブしながらの戦いをする余裕はあるだろう。



「スマンが、頼む」

「はい」

「ああ」



 ディルは戦闘を終えてから、地面に座って休憩を取る。

 彼が見ている先で、イナリとシアがオーガの胸を開き、魔石を取り出している。


 ディルは、中腰で作業をすることがかなり難しい。

 一応やれることはやれるのだが、何度か繰り返していると徐々に戦闘時の動きが鈍くなってしまうのだ。

 恐らく原因はディルの腰が貧弱なところにあるだろうが、そう簡単に鍛えられるようなものでもない。


 なのでもっぱら、魔石回収はイナリ達の仕事だった。


「シアさんは、何階層まで行ったことがあるのかの?」

「二十三階層までは行ったことがあります。地図はリーダー持ちだったので、私自身階層ごとの記憶はないですが」

「じゃあこの辺りの戦闘は問題ないの」

「はい。一応、ある程度の連携は取っておきたいところではありますが」

「それもそうじゃね」



 今までの戦いは基本的にイナリの毒で敵を処し、それが無理な場合は三人で適当に打ち散らす場合がほとんどだった。

 一応シアが後衛になり魔法を放つというパターンがもっとも多かったが、明確にこうと打ち合わせをしていたわけでもない。


 まだ余裕があるここらで一度、しっかりと連携ややれることの確認をした方がいいかもしれない。


 ディル達はマッピングをしながら、一体だけで行動しているはぐれオーガを狙い、何度か戦ってみることにした。


読んでくださりありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[良い点] いつも楽しく読ませてもらっております。 [気になる点] 92/205 「道のりは遠く」にて シアの到達階層が十層とされており、 本82話の二十三層という話と齟齬が生じております。 [一言]…
[気になる点] >嘗めてかかって 以前は「舐めて」の方を使ってます。
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