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わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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第一階層

日間45位まで来ることができました!

感謝の意を込めて投稿いたします!


 眩しい光が、目を瞑っていたディルの瞼の裏にまではっきりと届く。

 思わず眉をしかめたディルは、光が収まってすぐ、手に感じる硬質な感触に違和感を感じた。


 どうなっているのかを確認するために、彼は恐る恐る目を開く。





 そこにあったのは、先ほどまでの狭く、後ろの詰まった第零階層ではない。

 ディルの頭よりもずっと高い天井のある洞穴が、彼の眼前に広がっていた。



 全体的に暗いせいでかなり視界は悪いが、随分と奥行きもありそうだった。

 鼻をつくコケやカビの臭いから考えると、この階層の湿度は随分と高いようだ。

 ディルは、最近カサカサになってきている肌が、気持ち喜んでいる気がした。




 周囲を確認してから、ディルは水晶から手を放した。

 そして今自分が握っていた転移水晶が、青い色合いをしていることに気付く。

 それは自分が転移をしたのだと理解するのに、十分なインパクトがあった。



「よし、それじゃあ行くぞ。ここの第一階層は、大した罠もないらしい。基本に忠実に行けば早々遅れはとらんはずだ」




 イナリは手慣れた様子で、腰に提げているポーチに手をやり、糸の束を取り出した。

 そして自分達が来た道をたどれるように、その片端を近くにあった大岩へと巻き付けていく。




 これは、二人が知った迷宮の探索行において使われる、古典的な手法の一つだった。

 迷宮は分かれ道なども多く、マッピングをしながら歩いたとしても、地図を頼りに戻ることが難しい場合がある。

 そんな時のために糸をくくりつけ、継ぎ足し継ぎ足ししながら、糸が続く分だけ前へと進み、糸が無くなれば元の道を帰る。


 慣れない冒険者は、こうやって探索を覚えていくのだそうだ。





 糸を巻き終えると、次にイナリはポーチから紙とペンを取り出した。


 そして自分がいる場所を真ん中辺りに書き込み、目の前に広がっている道のりを書き込んでいく。

 いわゆる、マッピングというやつだ。



 転移水晶が指定できるのは、階層だけである。

 行き来ができる転移水晶自体は、一つの階層に複数個あり、どこに転移するかは行ってみるまでわからない。

 同じ場所をぐるぐる回らぬよう、地図を作るのもまた、重要なことであるらしい。


 地図は一応売ってはいるらしいが、どの地図が信用できるかもわからなかったで、今回の購入は見送っていた。




罠探知ファインドトラップ………よし、行くぞ」




 イナリが先導する形で前へと進み、ディルがその後をついていく。

 これもまた、迷宮に入る前に二人で決めたフォーメーションであった。


 彼女は罠を感知する魔法を覚えている。


 全ての罠を完全に察知できるわけではないらしいが、この魔法とイナリの注意深い観察があれば、ほとんどの罠は事前に察知ができるらしい。


 イナリがそう豪語していたので、ディルは彼女を信じることにしたのだ。



 更に、イナリは斥候の役目も兼ねている。

 彼女の感覚は、ディルと比べるとずっと鋭敏だ。





「いる。多分ゴブリン、数は五だ」



 そう、それは随分と先にいる魔物を、気配だけで数まで言い当ててしまうほどに。




 ディルは腰に差している黄泉還しを手に取り、腰を低くして、ゆっくりと前へ進んだ。

 その際にはイナリを後ろに下げて、自分が前に出るのも忘れない。




 罠の発見、索敵、そしてマッピングとイナリがこのダンジョンにおいてやらなければいけないことは多い。

 彼女が疲れて精度が役目を果たせなくなれば、すぐに二人は危機に陥ってしまう。


 ディルは迷宮では、戦う以外のことはほとんど何もできない。

 そのため基本、先陣を切る役目は彼の仕事ということになっていた。

 役割分担というやつである。





(先が見えにくいせいで、どうにも敵との距離が掴みにくいのぉ)




 湿度のせいか、汗を掻き始めたディルがゆっくりと進んでいく。

 するとすぐに、獣くさい臭いが漂い始めた。

 更にすり足で前進していくと、ゴブリンの姿が目に入る。




 その見た目は、以前狩った地上のゴブリンとなんら変わらない。

 着ている服はボロいし、持っているのは紐で石をくくっただけの石斧だ。

 そして数は、イナリが言っていた通り五匹だった。




 ゴブリン程度ならば、わざわざスキルを使う必要もない。

 ディルは歩く速度を上げ、早足でゴブリンへと近づいていく。



 ゴブリン達が接近に気付き、ディル目掛けて走り出した。

 だがディルはあえて駆けることはしない。


 迷宮行というのは、基本的には長丁場だ。

 ただでさえ人より体力のないディルに、無駄に使っていい体力などない。


 彼は見切りを使い続けることで覚えた、洗練された動きで石斧を避ける。

 薄皮一枚のところで斧をかわし、剣を横にして一歩前に進む。




 すると音もなく剣がゴブリンに刺さり、まるでバターのようにその腹部を断った。

 ずるりと臓物がこぼれ出すゴブリンは放置し、向かってくる残りの四体へと意識を向ける。



 ゴブリン達は警戒度を上げたのか、二体ずつ、左右から同時に攻撃を仕掛けてきた。



 ディルは屈み、右からの一撃をよけ、黄泉還しでそのゴブリンの肘をかち上げた。

 攻撃をしかけようとしていたゴブリンは、跳ね返ってきた仲間の石斧をもらい、つんのめる。



 左からやってきたゴブリン達の方に二歩進み、足を前に出す。

 重心を移動しようとしていたゴブリンが体勢を崩したので、そこに軽く突きを入れた。


 残る一匹のゴブリンの振り下ろしを、バックステップで回避する。

 同士討ちをした形になった、右側のゴブリン達の脚を浅く切り裂き、動きを止める。



(これで動けるのは、左の二体だけ――)


 ディルは転び、うつ伏せになっていた一体のゴブリンの脳天に、剣を差し込んだ。

 これでまともに動けるのは、左側にいた一体だけになる。



 下ろした石斧を、力任せに振り上げようとしていたゴブリンの手首を狙って、突きを放つ。

 うめき声を上げて武器を取り落としたゴブリンの喉に狙いを定め、ディルは剣を突き立てた。



 剣が喉を貫通し、ゴブリンの背中側から生える。



 ディルはちとやりすぎたと反省しながら、剣をゆっくりと引き抜き、くるりと後ろを振り返る。

 足を怪我し、びっこを引いている二体のゴブリンが、彼から逃げられるはずもなかった。



(これくらいなら……最低限の休憩を取れば、いけそうじゃな)



 ディルは確かな手応えを感じながら、残る二体のゴブリンへと、とどめをさした。

読んでくださりありがとうございます!



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