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わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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アーティファクト

日間ランキング129位にまで上がることができました!

これも皆様の応援のおかげです!

嬉しいので、更新することにしました!

「そうだね……まずはこれを、っと」




 ウェッケナーは自分の机についている引き出しに手をかけ、中をごそごそとやりじめた。

 ディルは一体何が出てくるのか期待しながら、ソファーに腰掛けた姿勢を維持する。




「えっと、これでもなくて、これも違う。んー……よし、これだね」




 引き出しの中を見ながら、何かを探しウンウンと唸る子爵。

 その様子から察するに、どうやら彼はあまり整理整頓が得意ではないようだった。 

 しかし、しばしの悪戦苦闘ののち、彼は一つのガラス瓶を取り出した。





「冒険者だったら、これがなんなのかわかるよね?」

「……ポーションかの?」

「そう、正解正解」




 ディルは自分の当てずっぽうが当たったことに、内心でホッとしていた。

 彼は今まで、ポーションなどというものを見たことがなかった。

 だが話には聞いていた、いわく怪我や病気を飲んだりかけたりするだけで治してしまう、魔法の薬のようなものらしいと。




 怪我がそのまま死に直結する冒険者稼業においては、そのような薬があるのなら、常備しておくべきなのはわかっていた。

 しかし、やはり美味い話には裏がある。




 ポーションと呼ばれる魔法の薬は、普通の冒険者では手が届かぬほどに高いのだ。

 一番安いものでも銀貨5枚、つまり宿5泊分の値段がする。




 それはギアンでスライムを乱獲していたディルであっても、早々払えるような金額ではなかった。

 故に今までは話を聞くだけで、実物を確認するようなことはしていなかったのだ。




 ディルは思考を戻し、どうして子爵が自分にポーションを見せたのかを考えることにした。 だがいくら考えても、可能性は一つしか、彼の頭に浮かばなかった。






「ポーションを使えば、体内に入っている毒達を駆逐できるということかの?」

「ただのポーションならある程度は、って感じかな。これは迷宮都市では当たり前のことだから教えるんだけれど、ポーションっていうのは迷宮から出るんだ。そしてポーションの等級、つまり出来というのは、それが出る階層の深度によって左右される」

「つまりより深い場所のポーションを使えば、なんとかなる可能性は、上がると?」

「そうだね、だから僕は、適当な迷宮都市に入ってみたら良いんじゃないかな、と助言しておくよ。迷宮って結構辛い場所だから、ディル君だとちょっと厳しいかもしれないけどね」






 ポーションには幾つかの種類があるらしい。

 体力を回復する、赤のポーション。

 魔力を回復する、緑のポーション。

 そして毒を解毒する、青のポーション。

 それ以外にも体力と魔力を同時に回復する紫ポーションや、飲むだけで身体能力や魔力が向上する特殊なポーションも存在しているらしいが、ディルには興味がなかったので、詳細については聞かなかった。



 解毒ポーションでイナリの体内の毒を取り去れるのかは、正直なところわからない。

 だが、聞いてみたところ、迷宮にはポーション以外にも、イナリのことをなんとかできるかもしれない道具が出る可能性があるのだという。




 迷宮、というものをそもそもディルはあまり知らない。

 時にダンジョンとも呼ばれるそれは、つまるところ古代文明と呼ばれる記録の途絶えた大昔の人達によって作られた、目的不明の魔物の湧きスポットらしい。




 古代文明と聞くと、ディルの心は躍った。

 男は何歳になっても、そういった言葉に弱いのだ。




 ウェッケナー子爵が言うには、古代の技術の九分九厘は、未だに再現することが不可能なロストテクノロジーであるらしかった。

 そして不思議なことに、迷宮には時折、その失われた技術により作られた謎の魔道具が出現するのだという。





「有名なものだと、使用者を二十年若返らせるアーティファクトとか、持っている人間が嘘をつくと重くなる石とかが有名だね」





 子爵曰く、なんの確証もないので話半分に聞いて欲しいのだが、迷宮でアーティファクトと呼ばれる古代技術による産物の中には、イナリの現状をなんとかできるかもしれないものがある、かもしれないという話だった。

 無論その確率は、ポーションでなんとかできる確率よりもずっと低い、というのはわかる。

 だが手がかり一つなかった状況からすると、こうして話を聞けただけで随分と事態が良い方向へと向かっている気がした。


 イナリは以前、自分とディルが死ぬのが同じくらいという言葉を残していた。


 それならば、少しくらいは時間的な猶予もあるはずだ。


 ディルは、自分の身体がまだ動き、魔物達と戦うことができる今のうちに、ダンジョンへ潜ることを決めた。




「その迷宮というのは、ここから近いのかの?」

「うーん、そうだね。近いのもあるし、遠いのもある。迷宮というのは深さが元々決まっているし、出てくる魔物の種類も、迷宮によって区々だ。まずは色々と調べて、自分に合っていて、かつある程度深さがある場所を選ぶといいと思うよ。子爵領の迷宮に潜ってくれると、僕的には嬉しいけど、別に強制はしないし」





 聞いてみると、子爵領には二つの迷宮があるらしい。

 一つは浅く、もう一つはそこそこ深いとのことだった。

 それならばまずは腕試しと、自分にこの情報を教えてくれた子爵への感謝も兼ねて、子爵領の迷宮を潜ってみるのがいいかもしれない。



 ディルの心は決まった。

 それならば次にすべきことは、情報収集だ。

 おじいちゃんは子爵に礼を言い、この場を去ろうとして……すんでのところで思いとどまった。





「――っと、いかんいかん。大事なことを忘れておった」

「ん? 何かな」




 不思議そうな顔をする子爵へ、ディルは語ることにした。

 自分が一応手を打った、とある商人のバカ息子のことを―――


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― 新着の感想 ―
[一言] 待っていました再開を、まさか再開されてるとは思わず本当に嬉しいです。ジジイの活躍に期待しています。
[一言] 再開してくれてありがとうございます! 更新楽しみにしてるんで評価ボタン連打したいのですが、一作品に一度しか押せないのですね。 1話毎に評価押せるシステムになれば良いのにな〜
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