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わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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再会

 奴隷、それは人を束縛するための一種の契約のようなものである。

 ジガ王国に現実に奴隷制度が存在している以上、ディルももちろんそれがどういうものなのかは知っている。

 奴隷には幾つか種類があるということ、そしてその種類によって扱いが変わってくるということ。下の方のいわゆる世間一般にとっての奴隷とは、期間雇用のような労働形態であること。

 だがディルが今回利用することを思い付いたのは、そんないわゆる借財奴隷ではないもっと厳しい条件で相手を縛り付けることのできる奴隷だ。

 犯罪奴隷、あるいは戦争捕虜の奴隷はその処遇に関して、所有者にかなりの裁量が付与される。

 それほど数は多くないし、その分値段も張るようになる。

 だがその分、ディルの言うことを聞かせることができ、かつ余所へ告げ口をされるようなことをあまり考えなくてもよくなる。

 向こうには情報入手と引き換えに奴隷解放をちらつかせれば、靡く可能性は十分あるはずだ。

 そうと決まれば話は早いの、一度奴隷商館に顔を出してみることにしよう。

 ディルはまだ話をしている二人に挨拶をしてから、店をあとにすることにした。


 



「ありがとうございました~」


 ひらひらと手を振られながらお見送りをされるディル、その背中は煤けて灰色になっていた。


(そりゃあ……そうじゃよなぁ)


 情報収集をしていた時と同じく、結果は芳しくなかった。

 自分の言うことを聞いてくれ、かつ隠密能力に優れたような人間を探すことは並大抵の条件ではない。

 借財奴隷で能力のある人間はまず最初に国や貴族に渡ることが多く、巷にまでやって来ることはまずない。それならば戦争捕虜ということになるのだが、それもまた中々手に入るものではない。

 隣国とも小康状態を維持しているジガ王国において、戦争などというものは早々起こらない。年に一度領地を接した貴族達の間で小競り合いがあるかどうかという程度のものなのだから、それを直接手に入れにいくのは至難の技である。

 そもそも在庫がないし、あったとしても今のディルには手に入らないほどに高い。


 情報収集をすることもないために、とぼとぼと道を歩くくらいしかすることがない。

 歩いているとやはり所々からオークション開催についての話し声が聞こえてくる。


 やっぱり、オークションで競り落とすしかないのかもしれんのぉ。

 奴隷を手に入れるというのは名案なように思えたが、通常の手段では自分が求めている能力を持つ奴隷を手に入れるのは難しそうだ。

 

 それならばオークションに顔を出してみるべきだろう。なんでも今回の奴隷は目玉揃いらしいし、あそこには奴隷やら魔道具やら色々な物が出ると皆が口々に言っていた。


(間接的な行程を弄するのは、どうにも面倒じゃわい。さっさと証拠なり現場なりを押さえられれば、あとは戦闘でどうにかなるんじゃが……)


 色々と面倒な手順を踏んでいる自覚はあったが、今のディルはあまり直接的な介入をすることができない。

 有力者への伝手どころか根回しも全くできていない状態では、確実に詰みにいける状態にまでもっていってしまわないと厳しいものがある。

 

 とすればとりあえず、オークションに出てくる物の大体の目星をつけるのと……資金面での工面が必要じゃの。

 今の金を持っていない状態で、金持ち相手のオークションの従業員が話を聞いてくれる可能性はそれほど高くないだろう。

 とすれば若干業腹ではあるが、あの男に頼るしかなさそうだ。


(思ってたよりもずいぶん早く、再会することになってしもうたの)


 ディルは見切りは使わずに、とぼとぼと歩いていくことにした。

 スラム近くにある、とある男と連絡を取るための場所へと。




 塗炭屋根の小屋を見つけ、ノックをしてからドアを開く。


「やぁやあ、来ると思ってたぜマイブラザー‼」

「兄弟という年じゃないじゃろ、どっちかといえば親子じゃわい」


 ディルの再来を予見していたのか、エディは驚いた様子もなく陽気に親指を立ててみせた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 推敲 >奴隷、それは人を束縛するための一種の契約のようなものである。  ジガ王国に現実に奴隷制度が存在している以上、ディルももちろんそれがどういうものなのかは知っている。 奴隷には幾つか種…
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