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わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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221/228

見える

(情報提供だけでも足りるとは思うんじゃが、それだと完全にわしの手柄とも言い辛い。というわけで義亜組の捕り物で活躍させてもらうことにしようかの)


 ディルの前にいるのは、安部家の与力達だ。

 与力、同心、岡っ引き。

 それだけではなく、選りすぐりの腕利きのサムライ達も同行している。

 万が一にも逃がすことのないよう、万全の体制を整えてきているのだ。


 息を潜めて向かう先は、当然ながら義亜組の事務所である。

 事前にどこかから情報が漏れぬよう、人員はこれでもかなり絞った方なのだという。

 ディルを入れて、人数は総勢で二十五名ほど。

 一つの組の人間をまるっと捕獲するには、たしかに少ない人数だ。

 けれど今回の捕り物においては、義亜組組長であるゴロウダや一部の幹部を除いては正史を問わずという通達がなされている。


 義亜組の事務所は、街の東の外れに建っている。

 周囲の家屋と比べるとかなり派手であり、装飾には金が使われていた。

 門の横にある義亜組の立て札を見た誰かが、ごくりと唾を飲み込む音が聞こえてくる。


「それでは――」

「突入せよ!」


 二人のサムライが、門の左右に立っていた警護の人間を斬り伏せる。

 ヤポンは相変わらず物騒だ。

 人の命が、ジガと比べるとずいぶんと軽い。

 けれどその分こういった時のように緊急性が高い場合は上の命令を即座に反映させることができるし、上の人間もとにかく判断が過剰なまでに早い。

 常在戦場という考え方が国民性にまで染みついているのだ。


(どんな結果になるにせよ、この剣がジガに向かうことがないようにしなければの……)


 ディルは他の者達の後を追う形で、屋敷へ殴り込みをかけるのだった――。


「侵入者、侵入者だ!」

「構わねぇ、かたっぱしからやっちま……ぐあああっっ!!」


 完全な不意打ちであるため、ディル達が奥へ進むのは実に簡単だった。

 組長のゴロウダがいるのは、屋敷の最奥。

 サムライ達は我先にとゴロウダ目掛けて先へ進んでいく。

 戦闘能力でなら勝てるが、瞬発的な速度はどうしても分が悪い。

 このまま行っても、武士達に先を越されてしまいそうだ。

 それに……とディルの脳裏にとある推測が浮かぶ。


(それだけ悪事に手を染め、どこでどんな恨みを買っているのかもわからない人間が、果たして何の対策もしてないなんてことがあるのかの)


 ディルがまず間違いなく、ゴロウダには何らかの手があると確信している。

 恐らくこのままでは、逃げられてしまうだろう。

 ということでディルは屋敷を一旦出て、外で調査をしてもらっていたイナリと合流する。


「どうじゃった?」

「屋敷の地下に不自然な空洞がある。恐らくは抜け道だろう」

「やっぱりかい、予想が当たったの」


 イナリの探知の魔法に引っかかる空洞があったそうだ。

 恐らく外のどこかに繋がっているのだろう。

 どこに繋がっているかまではわからなくとも、イナリに魔法を使ってもらえば地下にある空洞を追いかけていくことはできる。


「行こう、イナリ」

「ああ、ディル」


 二人は街の中を、空洞を突き当てながら進めていく。

 ディル達が向かっていった先にあったのは……草がぼうぼうに生い茂っている広場だった。 更に南に進んでいったところにあり、街の端なこともあり人通り自体がかなり少ない。


 ディル達が慎重に観察しながら様子を窺っていると……


 ボゴンッ!


 地面が大きく陥没し、隠されていたはしごが出現する。

 そして中から数人の護衛を引き連れ、人相書き通りの見た目をした男が這い出してきた。


「ゴロウダ、お主の悪行もここまでじゃ」

「……なっ、なぜここがバレた!?」


 護衛をボコボコにし、ついでにゴロウダの捕縛にも成功。

 ディルは無事にヨシロウから反モトチカへの鞍替えの旨の答えを得ることに成功したのだった。


 これで美空家の説得ができれば、後は千姫を助けるだけでいい。

 終わりが見えてきたことに安堵するディルであった――。

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