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わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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209/228

表と裏


 ディルはその日から、日村組の用心棒として働くことになった。

 だが幸い行動の自由はあるため、事後ではあるが一応イナリに報告ができるようになった。

 ディルは事前に指定していた待ち合わせ場所へと向かい、話をすることにした。


「ふふふ、なるほどなぁ……」

 

 報告を受けたイナリは――眉間にビキビキと青筋を立てる。

 けれど怒鳴る前に一度己の怒声を内側に溜め込み……結果として、はぁと小さくため息を吐くに終わった。


 もうディルの独断専行を叱るだけは無駄だと諦めている様子だった。 

 気付いたらしでかしてしまうのはディルの生来の気質のせいでもあるので、正直ディルとしても助かる。


「それで、ディルは日村組の内側から問題に対処するつもり、ということだな」

「ああ、結果としてはそういう形になってしまったの」


 もし日村組がやろうとしていることが、美空家に取ってよくないものなのだとしたら、ディルとしては捨て置くことはできない。

 それを止めて、その功績から美空家と話をするというお約束のパターンが、結局一番成功率が高くなるだろう。


「それでは私は今回、表から美空家についての情報を集めることにしよう」

「表から?」

「ああ、今回は鬼岩での活動は最低限に控えさせてもらおう。ボケ老人のディルは忘れているかもしれないが、私は本来ここに居てはいけない人間だからな」


 忘れてたとは言えなかったディルは、とりあえず神妙に頷いてその場をやり過ごそうとするが、結局見透かされたイナリにポカリと頭を叩かれてその場で謝るのだった――。



「というわけでディル、お前は今日から日村組の用心棒になってもらうぜ」

「はあ、まあ、はい……」

「おいおいどうしたんだよディル、昨日うちにカチコミをかけてきた時の威勢はどうしたんだい、ああん?」


 日村組を取り纏めている風だったあの禿頭の男は、その名前をドリューといい、別の組の頭とかではないらしい。

 日村組のリーダーは現在この地を離れており、リーダー達が不在の中、しぶしぶリーダーをやらされているということだった。


 あんまりやる気が出ないディルだったが、やり始めたからにはちゃんとやりきらなければこんなことをする意味がない。

 せめて美空家につながる情報の一つや二つくらいは手に入れようと、真面目に仕事をすることにした。


「といっても、基本的にやることは難しくねぇ。うちの縄張りを漁ろうとする奴らをぶちのめし、俺達をしょっぴこうとする与力からは上手いこと逃げる。おおまかに言えばうちの組の奴らと面子を守りさえすりゃあ、あとは何をしたっていいっちゅう寸法さ」


 日村組の人間は、少し前に美空オルカが行った一斉検挙で大幅に人員が減ってしまったために、かなり大きなダメージを受けている。

 そのため人員もかなり少なく、有り体に言えば方々から舐められている状態だった。


 ディルを雇った一番の目的は、日村組の名誉を回復するために余所の人間にその力を見せつけることらしい。

 ディルは早速、仕事を言い渡されることになる。

 その内容は地味な者から結構派手な者まで、次に様々だった。

 スラムの子供達に戦い方や自衛の仕方を教えるというようなものもあれば、実際に喧嘩をしている人間の仲裁に入ったりと、雑用のようなこともやらされた。


 ディルはこの仕事をするにあたり、一つの誓いを立てた。

 みだりに殺生をしない、ということだ。

 ディルは後ろ暗い仕事を受けるのを断ったりしながら、日村組の中で徐々にその存在を認知されるようになる。


 そんな時、彼に大きな話が舞い込んできた。

 その内容とは、縄張りの近いところで小競り合いの絶えない隣の組との抗争の手助けである。

 この争いには、未だ見たことのない組長の日村も参戦するらしい。

 話を進めるには、まず日村に認知される必要がある。

 というわけでディルは有田組の人間と戦うべく、抗争が始まったと同時、急ぎ現場へと向かうのだった――。

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