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わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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光と闇


 その鉱山街の名は鬼岩、なんでも街の真ん中に鬼に似た大岩があることからそう名付けられたらしい。

 鬼岩の街の門番が、ディルの方を見る。

 旅人か何かだと思っていたらしく、ディルがギルドカードを出すと驚かれた。


「なんだ、に級冒険者か。爺さん、そんななりして案外強いんだな」

「そ、そんななりしてって……ひどいこと言うのぉ」


 門番に問題なしと言われ、無事中に入ることに成功。


 ちなみにこの場にイナリはいない。


 別行動をしてから、ある地点で落ち合う手はずになっていた。

 お尋ね者である彼女とディルを紐付けるような芽は摘んでおこうということらしい。


 というわけでディルはまず一人で鬼岩の街を歩いてみる。

 新しい街に来るのにも、もう慣れたものだ。


 露店で物を買ったり、遊んでいる子供達に話しかけたり、井戸端会議に花を咲かせるご婦人方の噂話に耳を澄ませたり。

 色々な方法で、情報を集めていく。


「オルカ様について話が聞きたいだぁ? まあいいけどね。オルカ様のおかげでこの鬼岩の街は安泰さ。昔は居た借金取りも今じゃ綺麗さっぱりといなくなってくれてね、あたし達庶民にゃ本当にありがたい話さ」


「ほいよ、鬼岩名物の鬼焼きさ。オルカ様のことが嫌いなやつはいないのか、だってぇ? ――そんなのまっとうなシノギをしてねぇ裏世界の住人ぐらいなもんさ。米の値段も安くなったし、貧民街の治安も良くなった。悪く言うところが見つからないね。最初は不安だったが、今じゃあオルカ様が領地を継いで下さって良かったと皆思ってるさ」


 何人かに話を聞いてみたが、やはり領主である美空オルカはかなり好ましい人間のようだ。

 彼女は曲がったことが大嫌いな実直な人間らしい。

 賄賂の類を好ましく思わないくらいか、渡そうとする人間には激怒すると有名らしい。


 以前この鬼岩の街を収めていた代官は、献金さえすればある程度の不正を見逃したりしてやっていたらしいが、オルカが領主になってからその人物は更迭され、徹底的に綱紀が粛正された。

 彼女は貧民街や鉱山労働者達に深い根を張っていたヤクザもの達を成敗し、街の治安を改善したらしい。


 ただ、気になる話も聞こえてきた。

 どうせなら話を聞いてみるかとやってきた、規模が縮小された貧民街での聞き込み。

 オルカのせいで行くあてがなくなった貧民達からすると、彼女への印象はあまりよろしくはないようだ。


「オルカ……けっ、あいつのせいで俺達はまともに飯が食えなくなっちまった。テキセイな取引だのコウキョージギョーだのなんだか知らねぇが、俺達がおまんま食い上げってのは変わらねぇ」

「なるほどの……」

「爺さんもこれから色々つらいだろうが、まあ生きてりゃなんとかなることもあるだろうさ」


 潜入調査じゃと意気込んだディルが着ているのは、捨てられずにいた返り血だらけのボロ布だ。

 そのあまりの汚さと臭さに、なぜか貧民の男にすら同情して色々な話をしてくれた。

 そしてその中に、流石に聞き逃せない情報が出てきた。


「なんでも余所で力を付けた日村組が、何かをしに近々戻ってくるらしいぜ。あそこに行けば、とりあえず仕事はもらえるから頼ればいいんじゃねぇか。まあ、斡旋される仕事の九割五分は非合法だけどよ」

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