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わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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直感


「ほうほうなるほど、それでわざわざこちらにいらしたと! アキコ殿はなんとも豪儀な女子おなごですなぁ!」

「いえいえ、直接海賊討伐にやってきたシゲハル様ほどではございません」


 どうしてこうなったんじゃろうか。

 自分の精神安定のために髭をしごくディルは、目の前の光景を見て呆けていた。


 アキコの向かいにいるのは、眼帯をしている片目の男。

 彼は井樋シゲハル――この柳楼国を収める井樋家の次男である男だ。


 なぜこの二人がこうして顔を突き合わせているかというと、以前ディル達を追いかけてきた時のように、アキコが暴走をしたのがその原因だった。


 『私が直接井樋家の人間の人となりを確かめてきます!』と井樋家の馬車にダイレクトアタックを仕掛けたアキコ。


 結果としてその体当たり的な営業は上手くいき、こうして話をすることができているからよかったが……もしもそうでなかった時のことを考えるとゾッとしてしまう。


(これも若さっちゅうことなのかもしれんの……)


 眼帯をしており話し方は大人びているが、井樋シゲハルはまだ二十歳前後にしか見えない青年だ。

 アキコが婚約をしたのは彼なのだろうか。


「それにしても、まさか噂の長門家のお転婆娘がこれほどの美女とは。弟のケイショウも喜ぶでしょう」


 どうやら弟だったようである。


 というわけで様子を見に来ただけのはずだったアキコは、気付けば井樋家の人間と接触することになり。

 その供であるディルとイナリも、なし崩し的に井樋家と関わりを持つことになるのだった。




「さて、話したいことが山ほどあるのはお互い様だと思いますが、我は今日は海賊討伐に用がありましてな。……アキコ様、この者達は?」

「信頼のおける私の従者ですわ、たとえ拷問を受けたとしても、一片の情報とて漏らしはしませんわ」


 イナリの方はそうじゃろうが、多分わしはあっさり喋ってしまう気がするの……などと内心で呟いているうちに、シゲハルは話を進めていく。


 彼が海賊を根絶やしにするためにやってきたというのは、どうやら事実らしい。


 シゲハルが到着してから直に、港に何隻かの船がやってきている。


 がっしりとした造りをしており、甲板に上るまでがかなり高い。

 恐らくあの海賊達の小さな梯子では、上ることすらできないだろう。


 そしてその側面には、大きな弓が備え付けられている。

 延焼を防ぐためか、船は甲板から何から、船体全てが真っ黒に染色されている。

 どうやら本気で海賊を潰すつもりのようだ。


「なぁに、既に海賊の根城は突き止めております。恐らくそれほど時間がかからずとも、今日のうちに殲滅は終わるでしょう。その後にする会食の時にでも、是非しっかりと話ができればと思います」

「シゲハル様も出陣なさるのですか?」

「もちろんです、井樋家の人間として恥ずかしくない戦いをしてみましょうぞ!」


 シゲハルは何も心配していないようだ。

 どうやら彼の後ろで控えているサムライ達も同様らしい。


 恐らくは海に囲まれているということもあり、彼らは海戦にも慣れているのだろう。

 明らかに短めの刀を持っているのは、船上での戦いに対応するためと考えられた。


 事前にしっかりと準備をしてきているとなれば、たしかに彼らが自信を持っているのもわかる話だ。

 けれどディルは先ほど、自分達が蹴散らした海賊達の言葉が耳に残っていた。


『ちっ、聞いてないぞ! この船がこんな化け物揃いだなんて!』


 あれが何を意味するのかはわからない。

 けれど何故だろうか。

 ディルにはこのままではシゲハル達が返り討ちに遭うような気がした。


 それはディルの直感だ。

 ただし今まで何百何千という戦いを乗り越え、『見切り』によって研ぎ澄まされてきた直感だ。

 決して軽く見ていいものではないだろう。


 少し悩んでから、ディルはゆっくりと口を開く。


「シゲハル様、もしよければ……わし達を船に乗せていただくことはできないでしょうか?」

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