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わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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海賊

「くっくっく、ついてるなぁ。まさかお貴族様が護衛船もつけずにやってくるとはよぉ!」


 がなり立てるように叫んでいるのは、髭もじゃの大男だった。

 遠目で見ただけで、ディルよりもかなりデカいのがわかる。

 小舟に乗っているのは、頭に頭巾を巻いている男達だった。

 誰も目がギラギラとしていて、明らかにカタギの雰囲気ではない。


 ディル達の乗っている櫂船は横に大きな作りになっているため、小回りが利きづらい。

 また最大船側が出るまでに時間もかかるため、こうして一度足を止められるとどうしても後手に回らざるを得ないのだ。


「海戦用意ッ!」


 後ろの方で船員達が戦う準備を始めていた。

 櫂を漕ぐ者と戦う者で別れるつもりのようだ。


 ディルの今回の目的はアキコの護衛なので、とりあえずアキコに近付いていく。

 離れすぎないよう気をつけながら、剣が振れるだけのスペースを確保することにした。


「海賊が出ることはよくあることなのかの?」

「海賊の存在自体はそう珍しくはないが……普通海賊船は、貴族の船は狙わん。下手に手を出せば、後で血眼になって皆殺しにされるのがわかりきっているからな」


 バカが、と吐き捨てるようにイナリが呟く。

 どうやら商船ならともなく、こうして貴族の家紋を堂々と出している船が狙われることはまずないことのようだ。

 後先考えていない海賊と遭遇してしまったことは、運が悪かったとしか言いようがないだろう。


 船と船の距離が近付いていく。

 見ればあちら側の小舟には、船体とそう変わらぬほどの長さの梯子があった。


 折りたたみ式のものを展開したのだろう。

 恐らくはあれをこちら側にひっかけて、直接乗り込んでくる心算だと思われた。


 戦闘が始まろうとしているからか、四方から檄を飛ばす声が聞こえてくる。

 けれどディルもイナリも、至って冷静だった。

 二人は一歩引いて周囲を確認しながら、敵の数と質を冷静に見定め始める。


「イナリ、海賊の処理の方法は、山賊や盗賊と似た感じでいいんかの?」

「ああ、基本的にはうらぶれた雑兵上がりばかりだし、戦闘能力もさほど高くはない。ただ、海に落ちると悲惨だから、そこだけは気を付けておけ」

「了解じゃ」


 船が接近し始め、両者の緊張が高まっていく。

 ディルも戦闘のために気を引き締めていたが、ふと視界に入る少女のことを見て気付いた。 自分には戦うよりもまず先にしなくてはいけない、とっても大切なものがあることを、思い出したのだ。


「アキコ様」

「な、なんでしょうか?」


 ――それは自分達が守らなくてはいけない、アキコのことだ。


 彼女は周囲の反対を押し切ってまで、一人で婚約者のことを調べに来た。

 今までいたお手伝い達も振り切ってやってきた今のアキコには、頼れる人がディル達以外にはいないのだ。


 旅路の最中のいきなりの襲撃。

 うら若き乙女であるアキコは、一体どれほどの不安に駆られていることか。

 その不安を払拭してやらずして、彼女の何が守れるというのだろうか。


「安心して下さい。あんな輩共、アキコ様には指一本触れさせませんので」


 気が付けば、アキコは変装を解いており、彼女の素顔が露わになっていた。

 ディル安心させてやろうと、アキコの整えられた髪を軽く撫でる。


「あ……ありがとうございます、おじいちゃん」


 コクンと頷くアキコへ頷きを返す。

 そしてすぐさま『見切り』を使い、はしごをかけてこちらにやってくる海賊達と切り結び始めるのだった――。 

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