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わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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サイカイ


 さて、ディルは無事に六国行きの船に乗ることができた。

 けれどその船は、その……控えめな言い方をすれば、非常にボロかった。


 通常の運賃を使い、合法で入っているわけなのだが、密入国した時よりもずっと貧相な船なのは、いったいどういうわけだろう。


「なんだいおじいちゃん、あんた八州を出るのは初めてかね?」


 オールを漕ぐ人達へ檄を飛ばして忙しそうにしている船頭さんは、そういってディルの方に笑いかけてくれた。


 嘘をつくのが上手くないディルは、それに曖昧な笑みを浮かべておく。

 下手なことを言えばすぐに嘘がバレるとわかってしまうのだから、何も言わない方がいいのである。


「八州と六国の間には鳴門海流っていうのがあってだね。一つの海流に沿って漕いでいくだけで、六国までひとっ飛びなのさ! まあ、飛んでるわけじゃないがね、あっはっは!」


 船頭のおばちゃんは、何が面白いのかすごい高笑いをしていた。

 ディルは苦笑を深くしながら、甲板から海をジイッと眺める。


 ディルが乗り込んだ船には、他にもたくさんの貨物が載っている。


 頭上で風を受けている帆と、漕ぐ櫂だけでまともに動くんじゃろうか。

 世界の神秘を感じながら、ディルは潮風をその頬に受けながらぼうっとする。


 海路を行ってからしばらくすると、この海流の名を象徴する鳴門が見えてきた。

 ディル達の乗っている船の進路の左右に、大きな二つの渦巻きが現れたのだ。


 渦巻きの間に広がっているスペースは非常に狭かった。

 船が一隻通れるか通れないか、というほどに際々な隙間しかないのだ。

 ディルには目の前の光景が、まるで顎を開いて待ち構えている肉食獣にしか見えなかった。

 だが船頭に焦った様子はない。


「ほら、気合い入れろ野郎共ッ!」


 彼女は至って冷静な様子で一喝。

 それだけで櫂を漕ぐ船員達の様子ががらりと変わった。

 左右の櫂の漕ぐ頻度が均一になっていき、少しだけ右に傾いていた船が次は左寄りになり、最後には真っ直ぐへと変わる。


 そしてスピードはどんどんと上がっていき――。


「……ごくり」


 ディルが思わず生唾を飲み込んだのは、ちょうど船が二つの渦の間を通り始めた時だった。

 だが彼の心配は杞憂に終わる。


 操舵に長けた船頭のおばちゃんの指示の下で、船はスルスルと進んでいき、そして何事もなかったかのように渦を抜けた。


「ふぅ……」


 ホッと一息つくおじいちゃん。

 グリフォンを相手にした時は戦えばいいと腹をくくればいいから楽だが、こういった自然の力というのは自分の『見切り』だけではいかんともしがたい。


「かかっ、なんだい、肝っ玉の小さいじいさんだねぇ」


 船頭さんが海にビビっているディルを見て笑う。

 それに釣られてディルも笑った。


 マザールビーアントやグリフォンを狩ることができるようになっていたというのに、ディルはどこまでも謙虚な人間なのだった――。


 そしてそこから先の船旅は順調に進んでいき。


 ディルはようやく、双爪国へと辿り着くことに成功する。

 そこから更に悪漢を退治したり、行きがけの駄賃に魔物討伐をして小金を稼いだりしているうちに、ディルはようやく待ち合わせ場所である『だんご皆たらし』までたどりついた。


 そこで待っていたのは――。


「久しぶりだなぁ……待っていたぞ」


 何故か額に青筋を立てて怒っている、イナリであった――。

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