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わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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謁見


 結局報酬はディル・ソラル・リンダの三人で分配することになった。

 割合としては大体6:2:2くらいの割合である

 ディルとしては多すぎるし、別にそこまでお金に困っているわけではないのでいらないと言ったのだが、二人が頑として譲らなかったために、ディルの方が折れた形だ。


「僕はただ牽制をしていただけで、有効打はほとんど上げられていません。そんなもの、何もしていないのと同じ。報酬はいらないなどと言われても、到底受け入れられませんよ」


「私だってそう。今回の戦いでは自分の無力さを痛感しただけだったわ。ちょっと自分を鍛え直さなくっちゃ。傭兵でもしようかしら……」


 というわけでディルは魔石やグリフォンの頭部等、一番価値のある部分をもらうことになった。

 それをギルドには売らずに、そのまま素材を持ち寄って加賀美家の屋敷へと向かうことにした。


 どうやら領主には既に情報が行っていたらしく、ディルが話をしたいと言うと大して待たずに謁見の許可が出る。


 ディルにとっての貴族と言えばスライムの核を卸しまくっていたウェッケナー子爵なのだが、明らかに彼は貴族の中では異質で例外的だ。


 ヤポンだと下手なことをしては即座に首を刎ねられると事前にイナリからは教えてもらっていた。

 なのでソラルから、事前に謁見の作法は聴取済み。

 最低限のマナーくらいは頭に叩き込んでいる。


 まず最初、ディルが屋敷の中に通される。

 そこには誰もおらず、入れられる人が座る畳みが敷かれている。

 そして少し先には、後から入ってくることになるお偉方が座るための上座があった。


 何段か高く作られたその場所には肘当てとクッションが置いてある。

 ヤポンのクッションは、たしか座布団とかなんとか言ったっけのう……と思いながら、ディルは平伏する。


 基本的には平民は頭を下げておき、それからしばらくしてから偉い人が入ってくるというのがヤポンの礼儀だった。


 ディルが「あ、このままだと腰痛が再発してしまうかもしれん」とちょっとヒヤヒヤしたタイミングで、スッと引き戸が開かれる。


 トコトコと聞こえてくるのは二つの足音。

 一つは座布団の上にどかっと腰を下ろし、もう一つはその後ろに立った。


 ディルは有事に備えて『見切り』を発動させる。


 上に二人、恐らくは天井越しにこちらを監視している存在がいた。


 ウェッケナー子爵の時はただのほほんと話をするだけだった。

 こんな風に態度が変わったのは、自分が冒険者を続けて擦れてしまったせいなんじゃろうか……と少し悲しい気分になったところで気付く。


(む、これは……)


 ディルの驚きの原因は、彼が頭を下げている畳みにあった。

 少し目線を上げた先にある、上座から数えて三枚目の畳み。 

 そこから何か、危険な香りがするのだ。


 恐らく畳の下にも誰か隠れている。

 ヤポンは天井裏や物置だけではなく、床の裏にまで刺客を隠すらしい。


 ヤポンではいつ何時でも気を抜くなというイナリの言葉を思い出し、気を引き締め直すおじいちゃん。


「面を上げいっ!」


 顔を上げていいのは、向こうからの許可が出てからだ。

 ディルはようやっと腰を曲げずにようなると、ゆっくりと上体を起こす。

 そこにいたのは、話に聞いていた通りのナイスミドルであった。


「ほう、そちがグリフォン討伐をした稀代の老人か……」


 加賀美家当主加賀美ハルチカは、値踏みするような視線でこちらを覗いてくる。


 八州のうちが一つ、相羅を修める領主の器量は如何か。


 ディルがむしろ値踏みをするのはこちらだという顔つきをすると、ハルチカの方はニヤッと童心に溢れた笑みを見せたのだった――。

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