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わしジジイ、齢六十を超えてから自らの天賦の才に気付く  作者: しんこせい(『引きこもり』第2巻8/25発売!!)


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観察


「どうせなら被害が出ないような場所へ行きたいもんだな」

「それはたしかにそうじゃの」


 ディル達は歩きながら、今後の方針について考えていた。

 ディル個人としては、グリフォンを狩って自分の名前を売ることさえできれば問題はない。

 あとは装備に使えるだけの素材があればいいし、グリフォンの革を軽鎧一人分仕立てるだけの素材以外は必要としていない。

 対してソラル達が求めているのは金であり、グリフォンの討伐に成功したことによる報酬と素材の代金は、ディルの分け前を引いても十分な額がある。

 ディル一人で戦うというのはさすがに心許ないし、共同戦線を組みたいと思っていた。

 もっともディルをただの老人と思っている二人に、その気はないようだったが。


「一応こんなものもあるわよ」

「これは……?」

「臭気袋。簡単に言えば、魔物の嫌がる匂いを出す袋ね」


 二人は色々と準備をしているようだった。

 対しディルが持ってきている物と言えば、剣に最低限の食料品、あとはイナリが渡してくれた毒くらいなもので……。


(……これ、何かに使えるかもしれんの)


 ダンジョン攻略の際にいざという時のためにもらっていた毒薬と解毒薬。

 毒性の強い物はしっかりと風がなされ、木の箱の中に入れられている。

 グリフォンに効くかどうかはわからないが、いざという時の切り札にもなるだろう。


 どうせならこの際に背嚢の中身を綺麗にしておこうと底までさらってみると、中から一本の瓶が出てきた。

 これはいったいなんじゃったかのぉと頭を悩ませて、そして思い出す。


 いざという時のためにということで一応もらっておいた、兵士の恐怖心をなくし興奮状態にさせるという薬だった。

 ディルが盗賊討伐の時にイナリが見せ、その後に一応渡してくれたものだ。


 ある程度の痛み止めにもなるし、肉体の限界を迎えても最後の一撃を放てるようになるからということでもらったのだ。


 ディルは自分で使うと言うよりも、誰かが怪我をした時の応急処置のために持っておいたのだ。


『まぁ、これを使う時点でもうどうしようもない状態になっているとは思うけどな』


 手渡す際の彼女の言葉は、相変わらず皮肉には満ちていた。

 その様子を思い出し、少しだけ懐かしい気分になる。


 イナリと別れてからまだそれほど時間が経っていないというのに、どうにも寂しさを感じる。

 どうやら自分で思っていたよりもずっと、彼女の存在がディルの中で大きくなっていたようだった。


(でもこれは、もしかしたら使えるかもしれんのぉ)


 ニヤリと笑うディルを見て、ソラル達が不思議そうな顔をするのと同時、遠くから声があがる。

 どうやら肉の匂いに釣られて、グリフォンがやってきたようだ。

 空に大きな敵影が映り、魔法使い達が魔法を飛ばし始めていた。


「街に被害が出てはマズいです、私達は街と冒険者達の間にいましょう」

「心得た」


 ソラル達はディルのことをあてにしていないようだが、別にそれで構わない。

 ディルは自分にできることをやろうと、降下してくるグリフォンをジッと観察するのだった――。


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